2020-01-01から1年間の記事一覧
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の第一楽章346小節目からピアノの両手による音階的パッセージがあるのだが、いちいち引っかかるように書かれている。要はEb G Bbにあえて言えばCbを付加した長三和音なのだが、その各構成音にそれぞれ3つの上下方向から…
ラヴェルはベートーベンを「あの音痴」と呼んだそうだが、確かにときどきそういわざるを得ないようなパッセージに遭遇する。5番のチェロソナタの最後のフーガだが、チェロの音色と勢いで聞かされてしまうが、相当書法は荒い。下の譜例で番号を書いたところが…
本日(12月28日)はラヴェルの命日だそうで… 夜のガスパール第一曲オンディーヌの冒頭である。 バークレー流の和声理論をあざ笑うかのようなラヴェルの色彩にあふれた和声。チック・コリアの言う「和声とはスケールの別名」を地で行くような、音階がそのまま…
25小節目からは全音音階全開である。 ⑨の部分は、ブロックコードの半音平行移動の形。31小節目の後半は、バスのb a as g に従って、b e g という和音が半音ずつすべり降りてくる。 ⑩のところ(36小節目)はアルペジオになっているが、冒頭の音型の再現である…
③13小節目。不思議な4度和音。④減七和音と属七和音が交替し、かつ二重の倚音が付されている。譜面は複雑だが響きは美しい。 ⑤左手オクターブ、右手5度とオクターブで外側から中心に向かうモチーフ。 ⑥f as ces es as f des という不思議なフレーズ。無理に言…
ドビュッシーの音遣いなんて、さんざん聞いているし、耳にもなじんで、どうということはないような気はする。気はするが、一応調べておこうと思った。題材は人口に膾炙したところで亜麻色の髪の乙女くらい行こうかとおもったが、ちょっと軟弱すぎると思った…
「ロンリー・チャップリン」 作詞:岡田ふみ子 作曲:鈴木雅之 「ザ・カセットテープ・ミュージック」でテンションを取り上げていた。日本的感覚からはメジャーの7度とマイナーの9度、メジャーの9度とマイナーの11度は同じ音といっていいのではないか。それ…
畏友KD先生が前衛音楽であると鋭く指摘されたヴィヴァルディの「四季」から「秋」の第二楽章。まじめに聞いてみる。 そもそも D Bb G Eと入ってくるところからして不安である。最高音が入ってEm7(b5)を構成するが全然定石どおりじゃない。①から②のところは7…
ボワヴァンの「オリヴィエ・メシアンの教室」324ページで、モーツァルトのK550第一楽章の再現部直前のフレーズ(160-167)に触れられている。確かにさりげなくかっこいい推移部である。第一主題がアナペスト的音型による、とあるのだが、アナペスト(anapaest…
ワルキューレの3幕終わり近くにあらわれる、いかにもワーグナーな進行。
ラモーの「鳥のさえずり」の一部である。基本的に5度進行の連続ではあるのだが、途中調性を見失うくらい自由に転調していっており、リズム的にも大変面白い。rは掛留音、七としたのは7度音だが、掛留ではなく順次進行で出てきたりする。
ショパンの嬰ハ短調のワルツの冒頭部分である。 見れば見るほどうまいこと書いてあるなぁと思う。2小節目はドッペルドミナントだが、のっけからこれでノックアウトである。9度の属和音の使い方、転調におけるm7(b5)と7(b5)の微妙な使い分けなど見事なもので…
プーランクの有名な6重奏の第一楽章、バスーンのソロの後、ピアノがソロで出てくる部分。調性的にはかなりきわどいところを綱渡りするフレーズ。 一応コードネームをふってみた。⇒は機能和声的な進行。〇で囲んだのは何らかの非和声音である。譜例の4,5小…
某所で話題に上ったD940であります。まことにシューベルトらしい美しさとシリアスな音楽探求のないまぜになったような作品です。細部を見てみるといろいろと面白いところがあります。 この一瞬の#5(増5和音=オーグメント)がなんとなくベートーベン風味。 …
ショパンの英雄ポロネーズの冒頭部分。 これがなかなか一筋縄ではいかない。基本的には属音のEbから主調のAbへの5度進行なのだが、いろいろ紆余曲折を経る。 2小節目の3拍目は見かけ上E7だが、解釈としてはBb7b5の主音が抜けた和音ということになろうか。3…
岩里祐穂・作詞、布袋寅泰・作曲、今井美樹の歌う「ひまわり」。一瞬、「あれ」と思う転調がある。 捕えてみれば我が子なり、ポップスの王道、I7からIV度への展開なのだが、ここでの工夫はそのIV度がマイナーになっていること。言い換えれば、A7からDm7でこ…
本日、広島原爆忌。この季節にちなんで、1853年の黒船(米国)から1941年に日本が英米に宣戦布告するまでを音楽とともに40分で追体験する「コラージュ 浦賀から真珠湾へ」演奏は双子座三重奏団のみなさんです。 youtu.be
プッチーニの超有名オペラ「トスカ」の冒頭部分である。 手法としてはトゥーランドットやラ・ボエームと近いものがある。変ロ長調ではあるが、まず主和音をならしてすぐ、全音低いVII♭へ行き、そこから減4度下(主和音に対して増4度)のIV#の和音を強調する…
プッチーニの「西部の娘」の冒頭部分は「私も知ってますよ」と言わんばかりの全音音階の多用で始まる。C7(+5)をそのままではなくon Bb (7度音上の第3転回形にしたところが工夫である。このまま「トゥーランドット」が始まっても違和感はないのだが(笑) 楽譜…
PucciniのTurandotの冒頭部分は、オクターブ12音の内、半音階的に動くところと装飾的な64分音符を除けば9音でできているかなり挑戦的なものだ。無理に解釈すれば、バスにFis Cisの五度がくること、冒頭がa であることを考えれば Fis moll であろうか。移動ド…
プッチーニの傑作「トゥーランドット」に出てくる中国民謡「茉莉花」の引用部分をとりあげる。最初の部分では児童合唱で出てくる。このテーマは繰り返しあらわれる。 そもそも「トゥーランドット」は冒頭、12音中9音を使ったテーマから始まるという、かなり…
松平敬さんの絶品の一人多重演奏を聞いてまたこの曲を思い出した。(最後にテルミンバージョンとともにリンクを貼っておきます) 武満徹「小さな空」は宝石のごとき小品である。音の使い方が独創的で、ストレートなクラシックではもちろんなく、ポピュラーミ…
マスネの超有名な「タイスの瞑想曲」である。初演は1894年。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」と同年である。 マスネは私の浅薄な知識でいう限り、それほど冒険的な音遣いはしていないのだが、この曲に関する限り、いろいろとトリックが仕掛けられてい…
Chopin という実も蓋もない直截なタイトルのついた14小節×2である。 冒頭、I から Vmという進行が出てくるが、これはビートルズはじめポピュラーシーンでいやというほど使われているが、おそらくこっちが本家だろう。8小節目のGdim7は経過和音ということで…
ロッシーニの音楽は多少の例外はあるにせよ、どんなに深刻なドラマが舞台上で進んでいようが、お構いなしに楽しく明るい旋律・和声・リズムが続くのだが、ここぞというところではちょっとだけスパイスをきかせる。 長大なオペラ「セミラーミデ」の第一幕の幕…
バルトークの青髭公の城の第6の扉から、比較的バルトークの和声構造が見えやすい部分として、練習番号102をとりあげて、スケルトンを作ってみた。音はこちら。 時には長三和音といった耳になじみのある和音に減8度とか緊張をもたらす音を加える①とか③とか、…
バルトークの陰々滅々オペラ「青髭公の城」より、第6の扉の開くところの音楽である。非常に特徴的な耳に残るサウンドだが、音の構造としてはそれほど複雑ではなく、半分ずつの第2バイオリン、ビオラ、チェロ、それとフルート3本のフラッター、ホルン2本にA m…
プッチーニはトスカに限らず、ボエームでもお蝶夫人でも自由な(機能的でない)三和音の平行移動を使っているが、トスカの幕切れ近くに分かりやすい部分があるので切り取ってみた。楽譜は Carlo Carignani のピアノ・リダクションを拝借した。 赤枠で囲った…
指ならしというかリハビリテーションというか、いまさらながらインベンションとシンフォニアなんぞ弾いてみたりしているのだが、大バッハはこういう小曲でもあなどれないテクニックを存分に盛り込んでいるのにあらためて驚く。 シンフォニア(3声)4番のニ短…
ドニゼッティのオペラ「愛の妙薬」の第一幕の終わり。全員が浮かれ騒いでいる中で、主人公のネモリーノだけが焦っているという場面。ネモリーノはいかさま薬屋のドゥルカマーラ「博士」から買った(偽の)惚れ薬が効果をあらわさない内に、思いをかけている…