Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

Chopin Polonaise Ab major op.53

ショパン英雄ポロネーズの冒頭部分。

これがなかなか一筋縄ではいかない。基本的には属音のEbから主調のAbへの5度進行なのだが、いろいろ紆余曲折を経る。

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2小節目の3拍目は見かけ上E7だが、解釈としてはBb7b5の主音が抜けた和音ということになろうか。3-4小節目の繰り返し音型は倚音を取り去ればEbの和音であるが、音階的には Ab Bb Cb D Eb Fb G Abとなり、Abマイナーに2箇所増2度を含む民族調の音階となっている。

5小節目冒頭は、Fbの和音をEbに乗せた形で緊張感が高い。6小節目の3拍目はEb7b9から主音のEbを抜いた形でこれが全音上のFbに解決する。

7-8小節目は3-4小節目と形は似ているがここでは増2度を含まない、Abマイナーの自然音階となっている。

9小節目冒頭でやっとF7/Eb という比較的クリアな響きとなり、Ebの低音を保持したまま、11小節目でBb7/Eb 、13小節目冒頭でやっと属和音Eb7が完全な形で姿を現す。

 

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今井美樹 ひまわり(布袋寅泰・作曲)

岩里祐穂・作詞、布袋寅泰・作曲、今井美樹の歌う「ひまわり」。一瞬、「あれ」と思う転調がある。

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捕えてみれば我が子なり、ポップスの王道、I7からIV度への展開なのだが、ここでの工夫はそのIV度がマイナーになっていること。言い換えれば、A7からDm7でこれ自体はなんの変哲もないV7-iなのだが、文脈としては、F#minor から A major に終止して、それが、Cmajor (あるいはA minor)のII度に移行することで、短三度上への転調を成し遂げているのがフシギ感の原因であろうと思われる。

 A minorからもとのF# minorに戻るところは、E7 F#m という、クラシックでいうところの「偽終止」の形(属七からバスが一音上がって短三和音に解決)になっています。

 

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F# minor >  A Major > C Major > A minor > F# minor

 

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「コラージュ~浦賀から真珠湾へ」録画

本日、広島原爆忌。この季節にちなんで、1853年の黒船(米国)から1941年に日本が英米に宣戦布告するまでを音楽とともに40分で追体験する「コラージュ 浦賀から真珠湾へ」演奏は双子座三重奏団のみなさんです。

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Puccini "Tosca" Opening プッチーニ「トスカ」冒頭部分

プッチーニの超有名オペラ「トスカ」の冒頭部分である。

 

手法としてはトゥーランドットラ・ボエームと近いものがある。変ロ長調ではあるが、まず主和音をならしてすぐ、全音低いVII♭へ行き、そこから減4度下(主和音に対して増4度)のIV#の和音を強調する。不安定で不気味なスタートである。

それに続く、②の部分は最初は三和音の並行進行が主体だが、すぐに上声2声の三度とバスがリズムをずらしながら半音ずつ下降してくる。ずれていなければ普通の四六の和音(三和音の第二転回形)であるが、このリズムのずれのために増3和音がたくさん出てくることになる。

そのあとの③の部分もアイデアは同じだが、上2声が減5度(増4度)になっているため、7の和音、減7の和音、増和音などが交代しながら現れるしかけである。これでこの悲劇の幕あけにふさわしい音響を作り出す。

楽譜は Carlo Carignani (1857–1919)による piano reduction版。

 

 

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Puccini "La Fanciulla del West" Introduction プッチーニ「西部の娘」冒頭

プッチーニの「西部の娘」の冒頭部分は「私も知ってますよ」と言わんばかりの全音音階の多用で始まる。C7(+5)をそのままではなくon Bb (7度音上の第3転回形にしたところが工夫である。このまま「トゥーランドット」が始まっても違和感はないのだが(笑)

楽譜は Carlo Carignani (1857–1919)による piano reduction版。

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Puccini "Turandot" Children's Song プッチーニ「トゥーランドット」から冒頭部分

PucciniのTurandotの冒頭部分は、オクターブ12音の内、半音階的に動くところと装飾的な64分音符を除けば9音でできているかなり挑戦的なものだ。無理に解釈すれば、バスにFis Cisの五度がくること、冒頭がa であることを考えれば Fis moll であろうか。移動ドでよめばド ソ# レ ミ ラ ミ♭ シ(=ド♭) ファ ソ (ミ)となり、そのあと、C# Major on Dm とでもいうべき和音に落ち着く。無理に書けばDm M7 (#11)である。この和音(マイナーとメジャーを重ねあわせ、一音だけ共通音を持つ)は非常に特徴的である。このあとこの和音はそっくり長三度下(BbmM7(#11))に行ってまたもどってと、かなりしつこく引っ張って、最後さらにCmM7(#11)でフェルマータ。次のアレグロも基本的にはBbmの和音である。

 (譜面はGuido Zuccoli編曲のピアノリダクション(1929))

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Puccini "Turandot" Children's Song プッチーニ「トゥーランドット」から中国民謡「茉莉花」の引用

プッチーニの傑作「トゥーランドット」に出てくる中国民謡「茉莉花」の引用部分をとりあげる。最初の部分では児童合唱で出てくる。このテーマは繰り返しあらわれる。

そもそも「トゥーランドット」は冒頭、12音中9音を使ったテーマから始まるという、かなり過激な音遣いがあって(a eis h cis fis c as d e)、前衛的といってもいいのだが、この愛らしいエピソードに関しては、比較的マイルドなリハーモナイゼーションが行われている。基本的に最初の4小節の和音進行の繰り返しであり、E♭とD♭の和音の交替はE♭のミクソリディアンといっていいであろう。途中勢いでG♭の和音が出てくるが、長三和音の並行進行と考えていいのではなかろうか。

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全曲版がYouTubeにあったので該当部分にリンクを張りました。

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(おまけ)オリジナルの「茉莉花」のテルミン・バージョンをご参考までにどうぞ。演奏・伴奏ともテルミン奏者三毛子によるものです。

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