ベートーヴェンの第3交響曲の第二楽章は葬送行進曲だが、これの半ばから始まるフーガを分析する。 フーガの主唱（S)は第二バイオリンにビオラの対旋律を伴ってヘ短調で出てくる。答唱（R）は第一バイオリンにハ短調ですぐにこれに続き、第二バイオリンの対唱…

有名なラヴェルのソナチネの第二楽章の冒頭部分である。この曲はどこをとっても宝石のような美しい和音が並んでいるのだが、特にこの第二楽章は美しい。 もちろん伝統的な和声ではない。並行8度、並行5度、並行7度、何でもござれである。終止も旋法的な終止…

ベートーベンの第3交響曲といえば大名作であるが、とりあえず第一楽章の第一主題をとっても、お世辞にも独創的とはいえない。（移動ドで）ドーミドーソドミソドーですよ。これくらい想像力に乏しいテーマもちょっと思いつかない。しかし、ここから大ベートー…

次の部分の分析を試みる。 最初の4小節は伝統的である。最初の3小節はGm7b5-C9-F-Gm7b5-C9 とヘ長調であり、4小節目はAm9b5-D9となっていて明らかにト短調である。 問題は次のピアニスティックな駆け上がり一小節あまりであるが、ここからバスがC#の間はC#m1…

この曲をはじめて聴いたときのショックはすごかった。なんだこれは！？という感じで、何がどうなっているのかわからなかった。一曲目も美しいのだけれど、なんと言ってもこの2曲目がね、びっくりしましたね。 A. 最初の部分はAb上の減七和音で、それにGとDb…

このパガニーニの主題では多くの変奏曲が作られているが、このブラームス謹製もなかなかのものである。ピアニスティックである。ここで取り上げるのは第一集の第１３変奏である。 ６小節目は左手は明らかにDmであるが、右手はG# G E といった倚音が使われて…

ラヴェルが戦争に参加する前に遺言のつもりで一気に書き上げたというピアノ・トリオ。不朽の大傑作であるが、本人は戦争に志願していったはいいもののすぐ怪我だか病気をしてしまい、病院で寝ていたらしい。彼は戦争には向かなかろう。 冒頭、第一主題の提示…

フォーレの最晩年の弦楽四重奏曲は、聞いている限りスムーズであるが、非常に自由な発想で書かれている。最初の部分だけ分析を試みる。結論から言うと、和声は機能的であるよりも色彩的・旋法的に傾き、増三和音や4度5度重ねの和音を使って調性をより自由に…

モーツァルトのこの弦楽四重奏曲は「不協和音」として知られるが、ちょっとした和声の試みを序奏において行っているに過ぎない。主部がはじまれば、いつもの明るく楽しい（そしてひょっとしたら悲しみを内に秘めた？？）モーツァルトの音楽である。 では、問…

Mahler Symphony No. 5 Finaleから、いかにもマーラーらしいフレーズを見てみます。中心的なアイデアは7度下がる、あるいは2度上がるというモチーフですが、和声法的対位法的にマーラー独特の処理がされています。譜例の2小節目から3小節目は7th和音の半音下…

Grieg のピアノコンチェルト イ短調 作品16。泣く子も黙るピアノコンチェルトの傑作でありますが、子供時分に譜面をみて「だめだ、こりゃ」と思ったのがなにを隠そう第一楽章31小節目のAnimatoからの一節であります。最初見たときは一体何なんだこれは、と思…

ブラームスの第3交響曲冒頭。このたった14小節にいろいろなアイデアが詰め込まれている。基本的なアイデアは3小節目から4小節目への長調から短調への転換であるが、わざわざバスで3度音をとってメロディーとの間で対斜を作って緊張感を増している。赤丸をつ…

Dvorakのどんどん上がるバスライン。Symphony No.9 Finale チャイコフスキーの下がっていくバスラインと違ってこちらはちょっとひねくれている。 赤い四角で囲ったところが尋常でない進行であるが、つぎつぎと新しい調性の「ページをめくっていく」感じがい…

交響曲第6番「悲愴」第3楽章のどんどん下がるバスライン。大変自然に聞こえるけど、仕掛けはきわめて単純なんですね。

「モーツァルトの「ピアノソナタ第11番」の自筆譜が発見されました。従来譜と自筆譜で弾き比べると、果たして――。」 http://www.nikkei.com/video/909666692002/ という記事がでたけれど、以前からこの部分はいろいろな解釈があって混沌としている。我々がも…

Bach French Suite No. 5 G dur のAllemande BWV816 ここでd moll になるのがシブいよねぇ。11小節、３拍目の最後のe は経過音でしょうか。

Berg の叙情組曲はたっぷり６楽章ある弦楽四重奏のための組曲で、Bergの不倫の記念碑であるが、第１楽章と第６楽章が１２音技法で作曲され、後の４楽章も無調であるが、響きはかなり調性的といっていい。図示したのは、第一楽章の終わりの部分だが、途中減七…

ハイドンの交響曲第43番の第二楽章の上の部分を聞いて、「はて」と思った。なんか似てるのあったよね。 多少音形は異なるものの、モーツアルトの交響曲第40番の第二楽章のこの部分によく似ている。しかも調も同じだ。モーツァルトは変ホ長調、ハイドンは調号…

Poulencのクラリネットとピアノのソナタの第二楽章 Romanza。出だしから戸惑うんですよね。 クラリネットソロの d fis b es に引き続いてピアノの和音。g b fis cisこれにのってクラリネットがgとa を軸にしたg moll っぽいフレーズをいれるんですが、ピアノ…

バッハのシンフォニア第９番は子供の頃の私にはなぞの曲でした。その後学んだことをもとにポピュラー風のコード分析をしてみました。Φはm7b5の意味です。また四六のドミナントは下に括弧をつけて表しました。

Bach Well-Tempered Klavier Book 1 #22 Fuga の58小節目がなぞの響き。一瞬変ホ短調が現れるということでいいのか。特に４拍目のアルトがcesなら明らかに変ホ短調だが、これがcだとすると変ロ短調のままということになるのか？うーみゅ。60小節目の三度重音…

いかにもワーグナーらしいなぁと思うところはたくさんあるので到底網羅しきれないが、ちょっとしたところにもワーグナーっぽさはあって、例えば「神々の黄昏」第3幕第２場のあとの間奏曲「ジークフリートの葬送行進曲」の３分半ほど立ったところだが： 調号…