プッチーニの超有名オペラ「トスカ」の冒頭部分である。
手法としてはトゥーランドットやラ・ボエームと近いものがある。変ロ長調ではあるが、まず主和音をならしてすぐ、全音低いVII♭へ行き、そこから減4度下(主和音に対して増4度)のIV#の和音を強調する。不安定で不気味なスタートである。
それに続く、②の部分は最初は三和音の並行進行が主体だが、すぐに上声2声の三度とバスがリズムをずらしながら半音ずつ下降してくる。ずれていなければ普通の四六の和音(三和音の第二転回形)であるが、このリズムのずれのために増3和音がたくさん出てくることになる。
そのあとの③の部分もアイデアは同じだが、上2声が減5度(増4度)になっているため、7の和音、減7の和音、増和音などが交代しながら現れるしかけである。これでこの悲劇の幕あけにふさわしい音響を作り出す。
楽譜は Carlo Carignani (1857–1919)による piano reduction版。