Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

2016-01-01から1年間の記事一覧

Prokofiev Flute Sonata Movt. 3

プロコフィエフのフルートソナタは、ヴァイオリンソナタとしても演奏されるし、クラリネットにオーケストラ伴奏というのもあったし、大変愛されている曲だ。この第3楽章を取り上げたい。 最初の部分だが、なんか騙された感のある進行である。 下の総譜にフル…

Prokofiev Symphony No.6 Movt. 1 & 2

とにかく妙な曲である。「戦争の悲惨を忘れてはならない」というのだが、確かに1,2楽章とも陰鬱な音楽であるが、それ以上にプロコフィエフの大半の音楽に比してかなり実験的であり、響きもあまりよくないように思う。案の定、この曲はジダーノフ批判にさらさ…

蔵出し 「春」-バイオリンとピアノのための

1994年作品「春」バイオリンとピアノのための-をimslpにアップロードしました。パート譜も作りましたので、誰か演奏してください(請)初演するなら今がチャンス! Finaleによる自動演奏はこちら。どうも16分音符が変な具合に強調される不具合がありますが…

【蔵出し】 クラリネットとピアノのための「海へ」 "À la mer" pour clarinette et piano

クラリネットとピアノのための「海へ」"À la mer" pour clarinette et piano 高校の時に書いたクラリネットとピアノの小品(5分半ほど)です。1978年1月28日の記録があります。 この曲はちゃんと転調もしてるし(爆)(f moll からd mollへの転調が美しいー…

Beethoven Violin Sonata No.3 Movt. 3 ベートーベンはなぜここまで野暮ったいのか

ドボルザークも相当なものだが、ベートーベンの野暮ったさは筋金入りである。ヴァイオリンソナタ第3番の終楽章を取り上げてみたい。冒頭の主題も相当なものだが、この二番目に出てくるテーマも野暮ったさにかけては引けをとらない。 音はこちら。 なぜこれが…

オーケストラのスコアというのも人智の結晶

平田オリザさんの「演劇入門」が面白かったので、実作の「東京ノート」の脚本を読む。 1994年作品、翌年の岸田國士戯曲賞受賞。舞台は2004年。ヨーロッパで戦争が起きているという設定を別にすれば、ごくごく小さな生活のあれこれが描かれるだけで「…

Cherokee Lullaby

アーサー・ビナードさんの小さくてピリッとした本「亜米利加ニモ負ケズ」の中にあったお話。 アメリカの先住民であるチェロキーは子守唄をつくるのではなく「狩って」くるのだ、という。狩りに行き、小熊を見つけると注意深くあとを追う。母熊のところにもど…

Patrick Gowers the "Opening Theme of the Adventures of Sherlock Holmes"

英国グラナダテレビのジェレミー・ブレッド主演の「シャーロック・ホームズの冒険」は質の高いドラマ・シリーズだった。惜しくもブレッドはなくなってしまったが。 このシリーズの音楽を手がけたのがパトリック・ゴワーズだ。このシリーズの音楽を集めたCDに…

三善晃 「夏の散乱」 ~現よ 明るい私の墓よ(宗左近)~ Akira Miyoshi /DISPERSION DE L'ETE 

某所で夏にちなんだクラシックの曲という話題があったのでこの曲を思い出した。 三善晃さんのオーケストラ曲はどれも一筋縄ではいかない。大胆でフレキシブルな楽想に、あくまでも精密緻密なオーケストレーションが施されており、スコアを眺めていてもこれを…

Karen Tanaka "Crystalline II"

ミュライユのお弟子さん、ということはグリゼイの孫弟子さんにあたる田中カレンさんの大変美しいピアノ独奏曲「クリスタリーヌII」を取り上げます。 高音域の高速のアルペジオを核として、トリルや、高音域のクラスターなどを効果的につかった美しい作品です…

Dvorak Symphony No. 8 Movt. 4th 尻切れトンボのトランペット

私は、ドヴォルザークの音楽を愛すること、人後に落ちるものではないと自負しているけれども、この作曲家は基本的に野暮ったい。かつ時々変である。 交響曲第8番の第4楽章の主題の確保が終わって、フルートとトランペットのデュオになるところなのだが、なぜ…

Richard Wagner "Tannhaeuser" Rebuttal to R. Taggart Murphy

R. ターガート・マーフィー「日本ー呪縛の構造(上)」から「たとえば 、ドイツの作曲家リヒャルト ・ワ ーグナ ーが一八五〇年に発表した 『音楽におけるユダヤ性 』という醜悪な内容の論文はきわめて大きな影響力を持つようになった 。その中で彼はユダヤ…

Water Melon County vs. Poulenc Sonata for Piano with 4 hands Movt. 2

アメリカ民謡だというのですが、どうもあやしげな「すいかの名産地」。これを1996年にやや現代風にピアノ独奏用にアレンジしたものがこちらです。 Jun Yamamoto:すいかの名産地 - ミュージック : MUSIC TRACK 最近気がついたのですが、これってPoulenc の S…

Teruyuki Noda Berseuse for piano solo

野田暉行「3つのピアノ曲」から第2曲ベルスーズ。 その最初の3小節を見てみます。この曲は他の2曲と合わせ、珠玉の響きの集大成という趣がありますが、響きのよさの秘密はそれほど難しくありません。下の譜面は最初の3小節ですが、比較的オーセンティッ…

1974年の自作コラール

1974年、高校時代に音楽の授業で、先生の出した動機をつかって短い合唱曲を作ってグループで歌うという課題がありました。高校は音楽学校ではありませんでしたので、なかなかゆるい作品が発表されて味わい深かったです。そのときに作った短いコラールです。…

Ravel String Quartet Movt.4 (5)

ラヴェルの弦楽四重奏第4楽章の続き。例によって模式的に書いた大譜表でしめします。音はこちら。 ここから第一ヴァイオリンがメロディーを出しますが、これはF Mixolydian という解釈でいいと思います。Fが主音で7音目にEbが出てくる。ただ、ここではGの音…

Bach Invention No. 6 E Major 2 voices

バッハのインヴェンションとシンフォニアには佳曲が多いのだが、これもその一つであろう。主音のEから上下にシンコペーションを伴ってひらいていく2声は、次のパートでは上下を入れ替えて繰り返される。(青と緑、橙と黄)実に論理的でシンメトリカルである…

Mendelssohn Symphony No.2 "Lobgesang"

メンデルスゾーンの交響曲第二番はシンフォニーとカンタータを組み合わせたような長大な作品であるが、どうも前から気になっていた。 全編を貫く主題がこれである。音はこちら。 これってさー、なんともイモったくないすか。ダサい。垢抜けない。 第一楽章冒…

Brahms Clarinet Quintet Movt. 1

クラリネット曲のオールタイムフェイバリット、ブラームスのクラリネット5重奏曲の第一楽章のごく一部をご紹介。 ブラームスは分厚い。かつ結構無茶をする。これは第一楽章の32小節目からですが、和声の扱いが斬新です。譜例は概念的なものです。音はこちら…

Schumann Symphony No.4 d moll

天才シューマンの実際上は2番目に作曲されたニ短調の交響曲である。ただ、形式をみると、4楽章制ではあるが、第1楽章と第4楽章の主題の間に緊密な関係があることと、第1楽章が通常のソナタ形式ではないこと、さらには改訂時に連続して演奏するように指定され…

Chopin Etude op.10 No.7

8分の6だが、右手に常に16分音符の重音が配されており、めまぐるしく和音が変わっていくように書かれている。調号はハ長調だが、テーマは同主短調を借用しながら進む。 和音の変化はあるものの、最初の3小節は大きく主和音ととらえていいだろう。 これだけ…

Richard Strauss "Also sprach Zarathustra"

リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラかく語りき」は偉大な名曲なのだが、スタンリー・キューブリックのせいでかどうか、冒頭部分だけ有名になってしまった。特に印象的な冒頭部分が終わると、低弦でごにょごにょとなるのでよくわからなくてみんな…

Debussey La plus que Lente

ドビュッシーはまさに感性のおもむくままに書いているようなところがあって、分析を受けつけないような曲が多いのですが、これは比較的理屈っぽく書かれているので和声アナリーゼをしてみます。 変ト長調ですが、最初からダブルフラットのBbbが入っていて、…

Grieg Piano Concerto a moll movt.3

ピアニストのアリス・紗良・オットさんがグリーグについて語っておられます。 yt2fb.com 終わりの方で言及されているメロディーが最後だけ#でなくナチュラルになっているというところですが、これは第三楽章の律動的なテーマの後に出てくるもので、まずフル…

Schőnberg String Quartet No. 1 (2)

前のエントリーの続きです。 始まって3分の1くらいのところで妙にロマンティックなパッセージがあるのですが、これも細かく見ていくとやっぱり一筋縄ではいきません。最初の部分の調性は間違いなくBb minorですが、だんだん後の方になるとあいまいになって…

Schőnberg String Quartet No.1 op. 7

シェーンベルクが十二音技法になる前の作品。一応ニ短調で始まるのですが、到底一筋縄ではいかない。どれが倚音でどれが掛留でどれが和声音なのかわからない。 一応、非和声音と思われる音に赤丸をつけてみましたが… 導音や七度音も解決されずに放っておかれ…

Prokofiev Symphony No.7 Movt.1

プロコフィエフの交響曲としては、1番(古典交響曲)、5番が有名かと思うが、この7番も名曲だと思う。これはプロコフィエフ晩年の一種悟りというか、青春への憧憬というか…モダニズムを追及した末にたどり着いた、新しい新鮮な調性の世界である。次に示すの…

Shostakovich Symphony No. 5 Movt. 4 (2)

先日の続きでございます。 嵐を経てめでたくA Majorに着地したところで、第3のメロディーはやや変形されて登場します。前回登場時のように調性があいまいになることなく、今回ははっきりA Majorで出てきます。但し、添えられている和音は一筋縄ではいきませ…

Rachmaninoff Piano Concerto No. 2 Movt.1

超有名曲です。ラフマニノフと言えば、ピアノコンチェルト、しかも第2番という方が多いと思います。一部、第3番を好きという方も多いだろうけれど、やっぱりラフマニノフといえばこの曲でしょう。第一楽章冒頭は有名なピアノのソロのイントロですが、これが…

小田和正 「君住む街へ」

松任谷夫妻も対斜には寛容だが、小田さんのは傍若無人、メロディー無視でとっぱずれたコードを当てる点ではいっそ清々しいくらいである。典型的なのがこの曲のこの部分。無茶である。