クラリネット曲のオールタイムフェイバリット、ブラームスのクラリネット5重奏曲の第一楽章のごく一部をご紹介。
ブラームスは分厚い。かつ結構無茶をする。これは第一楽章の32小節目からですが、和声の扱いが斬新です。譜例は概念的なものです。音はこちら。
ここまでの進行はsi すなわち B minor ですが、ここの4小節でLa すなわち A Major に転調するのですが、II度和音すなわちC#mにいってから、大胆にもFに行ってしまいます。これはB minor からすれば主和音の減5度上の和音であり、完全な不意打ちです。なにしろしっかり対斜も起きています(赤線で示した部分)
Fはこのあと落ち着こうというA Major にとっては並行短調 A minor の VIの和音なので、同じく並行短調のIIIの和音のCを経て、大胆にも主和音のAにまたまたくっつけてしまいます。ここはさすがにバスが C-C#と動くので対斜は起きていません。
さらにもう一度念を押すようにFを出し(しかも F maj7 aug5という、並行短調とA Major にまたがるような和音で)Dm を経てやっとAのドミナント E7に達するのですが、このE7(属和音)もE7b9の主音省略(=D dim)という形で通り抜けてAに落ち着きます。実にアクロバティックな4小節だといえましょう。