超有名曲です。ラフマニノフと言えば、ピアノコンチェルト、しかも第2番という方が多いと思います。一部、第3番を好きという方も多いだろうけれど、やっぱりラフマニノフといえばこの曲でしょう。第一楽章冒頭は有名なピアノのソロのイントロですが、これがトリッキー。最初の和音は主調 C minorの下属和音のFm から始まります。
Fm Fmb6(=DbMaj7) Fm6(=Dm7b5) Fm7 F7 Fm7 Fm6 Fmb6 Fmb69 Cm
Cの音が、Db D Eb と上がっていき、F7でBbmへ行くのかなと思わせて、また戻ってきて、結局C minorに解決して、こっちが主調だったのよん、という展開。
主調に入って、ピアノは主和音上でアルペジオですが、赤で○印を付けたように、ところどころ倚音を交えて、陰影をつけています。
2小節おいてテーマが始まります。如何にもロシアンなメランコリックなメロディーであります。(下の譜例)
Cm G7 Cm G7 Cm (D7) Dm7b5 G というコード進行なのですが、このD7のところ実は、D G C F Bb という完全四度4つ積み重ねの和音になっていて表記のしようがありません。響きとしてはGm7がD7sus4にのっかっているような響きとでも言いましょうか。
つづいて Cm Ddim Eb/G Fdim Ab/Eb C7/E Fm と続きますが、機能的には、
Cm Bb7 Eb G7/F Ab/Eb C7/E Fm であり、C minor 上で
I VII7 III V7 VI I7 IV でしょう。
もう一度繰り返しで、(上の楽譜の下から二段目、2小節目から)
Cm G7 Cm G7 Cm D7(DGCFBb) Dm7b5 G7 Cm (Fb7) Ab/Eb C7 Fm G7 Cm D7 G
となりますが、面白いのはこの (Fb7)で、一回目はFdim=G7/Fと解釈したところなのですが、二回目はFb7の構成音、Fb Ab Cb Ebb がそれぞれ次のように解決します。
Ebb(=D) → Eb
Cb(B) → C
Ab → Ab
Fb → Eb
という進行になっています。非常に効果的で外連味たっぷりです。
次は、クラリネットとヴァイオリンの旋律が一段落して、下の楽譜の二小節めからチェロが二部に分かれて、旋律を引き継ぎます。ためらいながらひとつひとつ上がっていくような旋律です。和声進行は
Fm Cm Bb7/D Eb Eb7 Ab Eb Dm7b5 G G7
下属和音から始まって、一度平行長調の Eb Majorを通り、さらに6度調のAb Major からまたG7に至ります。
G7を出して、元のC minorに戻るかと思いきや、Db7に入ります。
Db7 G7 Eb7 C7 Fm Bbm7b5 Eb Ab Cm D7
Db7 とG7は裏コードの関係にあり、F とB の音を共有しています。そのあとの、G7 Eb7 C7 は3度ずつ属七和音が下がってくる形でこれもよく見られます。
そのあとの、Fm Bbm7b5 Eb の部分がややこしいですが、基本的にVl― II― Vという進行です。
下の譜例の最初から、
Gm7b5 C7 Fm G7 EbMaj7#5 Ebm7 Ebm7b5/Ab Ab7 DbMaj7 Db7 G7
C Cm7 F7 DbMaj7 Fdim Ab/F# G7 C7 Dm7b5 Fm C7
Fm Dbdim Fm F#dim Ab7 G7 Cm
すなわち、F minor から Db Major へそこからCmに戻り、Bb Majorを経由して、主調のC minorに戻ります。EbMaj7#5以降の音の動きを確認します。
次の F7 からの動きも面白いですね。