Jun Yamamoto音楽を語る

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クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

まんぞヲ「まぶろぅらるの六の森」楽曲分析

まんぞヲさんの名曲「まぶろぅらるの六の森」の楽曲分析をしました。(間違いのご指摘など、ありがとうございました>あのまりあさん)下記の譜例は、もとのMIDI版の調(ハ短調)によっており、和声もオリジナルのものです。下に最近行われたまんぞヲさんのライブ(「見本市」)での演奏をリンクしておきますが、この演奏は長三度高いホ短調で始まっており、和声付けもリハーモナイズされていることをお断りしておきます。

この曲のすごいところは、最初に出てくる動機(タタタータタタータタター)でほぼ全部が構成されていることと、転調をたくみに行うことで、まるでどんどん際限なく上昇していくような感じを創り出しているところです。「まんぞヲマジック」!

ウタの部分は5つに分けることができ、それぞれアウフタクトを除いて4小節です。①と②は同じ旋律を、コードを変えて繰り返しています。③では同じ音形が2小節続いて、上昇する感じになっています。④は③の短三度上から始まり、③を短調ではじめたのに対し、メジャーではじめて、これも強烈な上昇する感じを出しています。⑤はさらに短三度上の調になって、コード付けとしては①と同じ形になって一段落となります。細かく見てみます。

① は基本音形を出して、ハ短調を確立しますが、最後の部分は属和音であるG7を出さずにGmにして、旋法調になっています。(C natural minor= C Aeolian)
② は、旋律としては①と同じですが、二つ目の和音からBb7-Ebにすることで、変ホ長調を経由して変化を与えています。
③ では冒頭は①②と同じ音形なのですが、これを主和音のCmではなくAbで支え、この部分は変ホ長調と解釈することができます。また、2小節目では①②では下降していた音形を上行として、Bbの音まで、冒頭のCから始まって短七度上昇します。この上昇を自然なものにするため、2小節目の後半をFmではなくFに変えています。もともとは変ホ長調ですが、ここで出てくるFの長三和音の第三音であるAの音は、リディア旋法の特徴音で、本来変ホ長調ならAbであるべきところAにしてより上昇する感じを強めています。(変ホ長調= Eb F G Ab Bb C D Eb、リディア旋法=Eb F G A Bb C D Eb)
④ ここまででも結構ひねりが効いているのですが、さらに④に至って、あたかも③の2小節目に戻ってさらに上昇するような形を作っています。最初の部分は③と同じ形ですが、さらに和音の平行移動を重ね、Dbまで上昇します。(コード進行:Eb F Gm Ab Bbm
⑤ まだ上昇は終わりません。①から③までは旋律冒頭がCの音でした。④ではこれがEbになり短三度上がったわけですが、さらに短三度上がって⑤では嬰へ短調になります。⑤のコード進行は①と同じで、一回り回って元にもどった感じも出しています。

上記のように、ウタの部分の中での上昇に加え、全体の開始音もC、Eb、F#(Gb)と短三度ずつ上がっていきます。これは③から④では、G7からEb、④から⑤ではBb7からF#mという、属七(ドミナント7)の和音から、長三度下の根音を持つ和音への進行が用いられています。これは属七の進行としてもバスが順次進行せず、また前後の和音の共通音がひとつしかないこと、属七の導音(3度音)が順次上昇して解決しない特殊なケースですが、たとえば最初のG7からEbのケースでは、後続和音のEbを旋律の最初の音として先取りすることで説得力を持たせ、かつ唯一の共通音であるGを前の旋律の最後と次の和音の最初の強拍におくことにより、不自然さが最小限に抑えられていると思います。

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