プロコフィエフのフルートソナタは、ヴァイオリンソナタとしても演奏されるし、クラリネットにオーケストラ伴奏というのもあったし、大変愛されている曲だ。この第3楽章を取り上げたい。
最初の部分だが、なんか騙された感のある進行である。
下の総譜にフルートパートとピアノパートを圧縮していれてある。最上段は説明のためのものである。
最初はF Majorで尋常である。やや音域の広いメロディーではあるが、フルートならば問題ない。6小節目からやや怪しいが、まだヘ長調の平面内に留まっている。8小節目でフルートとピアノのバスが反行して自然にバスはF#、フルートはAに達し、なんとなくF# minorに落ち着いている。騙されたような気がするのはここである。いつの間にか半音上の主音の短調になっている。調号としては#が三つ着くところだろうから五度圏を逆回りに4回ジャンプしたことになる。(F→C→G→D→A(f#))
バスが長三度下がってDになり、10小節目から13小節目はおそらくは和声はDmなのであろうと思う。F#が時々出てくるが、これはFに対する倚音と解すべきではないか。12小節目の頭では平気でFとF#が共存している。二回出てくるG#もAに対する倚音と考えるべきであろう。
14-15小節目はD上のGの和音と解するべきだろうか。たった3声で、動きに無駄がないので説得されてしまうが、15小節目のバスはF#。上二声との間でずれながら進行し、16小節目で減七の和音っぽくなってDm7にずれていき、めでたくCの和音に収束する。
やっぱりなんか騙されてる気がするんだよな、これ。