Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

Ravel Ondine (Gaspard de la nuit)

本日(12月28日)はラヴェルの命日だそうで…

夜のガスパール第一曲オンディーヌの冒頭である。

バークレー流の和声理論をあざ笑うかのようなラヴェルの色彩にあふれた和声。チック・コリアの言う「和声とはスケールの別名」を地で行くような、音階がそのまま和声になっているような緻密な構造。コードネームをつけてもあまり意味はなく、せいぜい音階順に音を並べてみるというくらいしか分析方法がない(と私は思う)。メシアンはこの左手の旋律(D#)が入ってくるところを「C#上の長九の和音に短六度のラが付加されている形」と分析したようだが(まさにその通りなのだが)、そのあとを追っていくと、あまり三度重ねの和音分析にこだわる必要はない、というか無意味という気がする。

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Debussy Reflets dans l'eau (3) 最終回

25小節目からは全音音階全開である。

⑨の部分は、ブロックコードの半音平行移動の形。31小節目の後半は、バスのb a as g に従って、b e g という和音が半音ずつすべり降りてくる。

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⑩のところ(36小節目)はアルペジオになっているが、冒頭の音型の再現である。Gb Fm Ebm7(Gb抜き)が連続して冒頭部分を回想させる。

 

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⑪44小節目からはバスに全音音階の旋律が現れて上行し高揚する。49小節目に至って調号が全部はずれるが、同じ全音音階が続く。C# aug/Bの形になっている。

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50小節目から、C#aug/B, B7(9), D7/A, G#7(-9)と属七和音系の和音を連ねて(バスは B A G# と順次下行)ついに、⑫57小節目において、劇的な4度下行(5度上行)により、E♭上の長三和音に達する。

 

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そのあとは、属七和音のヴァリエーションに全音音階を加えた進行が続き、⑬66小節目に至って調号はシャープ三つになる。ここでのF#m - Dm という連結は独特の風合いをもっている。

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⑭では、安定したAの長三和音の上に四六の和音の形で、C#m B A が平行移動するという形になっている。これも特徴的でかつ効果的である。全体としてはAのリディアンを感じさせる。

⑮に至るところはA Cm という連結でこれも耳をそばだたせる。

⑯はEbm/Ab というポップスではおなじみのドミナントの形に、同じく四六の和音が平行移動する(B♭m7, A♭, G♭)。

⑰はテーマの再現である。少々和声は変わっているが移動ドで ドソレ・レラミというテーマは同じである。

 

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⑱の左手から右手に受け渡される音型は、なんとなく耳なじみのあるもので、⑥の音型とか、60-61小節目の音型とかを想起させる。

⑲の低音部はB♭♭とD♭の2オクターブ重ねであるが、旋律は変ニ長調であり、Aの上にDes durが乗っているような、複調的なイメージがある。

曲はG♭、E♭、を経由して、D♭・A♭の空虚5度の上に静かに終止する。

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Debussy Reflets dans l'eau (2)

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③13小節目。不思議な4度和音。④減七和音と属七和音が交替し、かつ二重の倚音が付されている。譜面は複雑だが響きは美しい。

⑤左手オクターブ、右手5度とオクターブで外側から中心に向かうモチーフ。

⑥f as ces es as f des という不思議なフレーズ。無理に言えばD♭7(9)だが、F 上のロクリアンっぽい。このモチーフはあとで形を変えて出てくる。

⑦に小節にわたってハーフディミニッシュ(Dm7♭5)が短三度ずつ上がっていくアルペジオ

⑧f as b ces es から始まって下がf fes es d 上が es fes f ges と半音ずつ広がっていくアルペジオ

 

Debussy Reflets dans l'eau (1)

ドビュッシーの音遣いなんて、さんざん聞いているし、耳にもなじんで、どうということはないような気はする。気はするが、一応調べておこうと思った。題材は人口に膾炙したところで亜麻色の髪の乙女くらい行こうかとおもったが、ちょっと軟弱すぎると思ったので「水の反映」にしてみた。興味は和音の色彩と連結の仕方にある。形式とか、まぁあんまり興味はない。

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①冒頭は変ニ長調、特に臨時記号もないのだが、(移動ド)ドソレという動きに伴う和声が、Gb>Fm>Ebm7となっていて、これはIV-iii-ii7という動きで特徴的かつ魅力的である。特にIV-iiiというのがドビュッシーの発明であろう。

 

② これはジャズがさんざんお世話になることになる、属七和音の連続半音上行である。ありていにいって、これをやっておけば、上に何が乗ってきてもたいていうまくいく(<ほんまでっか

「ロンリー・チャップリン」 作詞:岡田ふみ子 作曲:鈴木雅之

「ロンリー・チャップリン」 作詞:岡田ふみ子 作曲:鈴木雅之

「ザ・カセットテープ・ミュージック」でテンションを取り上げていた。日本的感覚からはメジャーの7度とマイナーの9度、メジャーの9度とマイナーの11度は同じ音といっていいのではないか。それぞれ移動ドでシでありレであって、そこに区別をつける意味はあまりない。IとVIの3度の平行移動に過ぎない。

名曲「ロンリー・チャップリン」のサビのハモリは、番組ではもう一つよくわからなかったが(移動ドで)ドのメジャー和音上で上がドードシドードシドーなのに対し下がラーラソラーラソラーになるがこの「ラ」が非和声音で、あえて言えば13度音ということだが、これはむしろ倚音ととらえた方がいいのではないかと思う。

テンションとしても add 6であって、13thととらえる必然性がないように思われる。いずれにせよ変なハモリであり、そこがこの曲のトゥイスト、魅力になっているのは間違いのないところだが。

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Vivaldi Violin Concerto "Autumn" Movt. 2

畏友KD先生が前衛音楽であると鋭く指摘されたヴィヴァルディの「四季」から「秋」の第二楽章。まじめに聞いてみる。

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そもそも D Bb G Eと入ってくるところからして不安である。最高音が入ってEm7(b5)を構成するが全然定石どおりじゃない。①から②のところは7の和音の上行の平行移動である。そのあとD#dim7 から A#dim7 は普通の5度下行ではなく5度上行という移動で、減七の和音が続くことで調性さえ曖昧である。

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④は通常のV-I進行なので安心するが、また減七和音に溶け込んでしまう。⑥、準備なく属七和音がでてくる(第一バイオリンが順次進行しているが)

もっとも謎なのが⑦と⑧の進行である。これは何でしょうね。C7から移行したAbmaj7のEbとGは掛留音ととったらいいのでしょうか。これらはFに解決してなんとなくFmの和音になってしまう。

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⑨は基調であるD minorのドッペルドミナントであると解釈すれば通常の進行、⑩も属音Aのペダル上のドッペルドミナントで属和音上に終止します。楽章全体が大きな半終止といえばよいでしょうか。

 

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Mozart Symphony No.40 K550 Movt. 1

ボワヴァンの「オリヴィエ・メシアンの教室」324ページで、モーツァルトのK550第一楽章の再現部直前のフレーズ(160-167)に触れられている。確かにさりげなくかっこいい推移部である。第一主題がアナペスト的音型による、とあるのだが、アナペスト(anapaest、弱弱強格)は、詩に使われる韻脚のひとつで、古典詩(古代ギリシャ語詩・ラテン語詩)ではアナパイストス(anapaistos、短短長格)と呼ばれ、2つの母音の短い音節の後に1つの母音の長い音節が続く、ということらしい。(Wikipedia)冒頭のファミミが短短長ということか。

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