Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

Rameau "Le rappel des oiseaux"

ラモーの「鳥のさえずり」の一部である。基本的に5度進行の連続ではあるのだが、途中調性を見失うくらい自由に転調していっており、リズム的にも大変面白い。rは掛留音、七としたのは7度音だが、掛留ではなく順次進行で出てきたりする。

f:id:jun_yamamoto:20201211130809j:plain

 

Chopin Waltz C# Minor Op. 64-2

ショパン嬰ハ短調のワルツの冒頭部分である。

f:id:jun_yamamoto:20201201162101p:plain

見れば見るほどうまいこと書いてあるなぁと思う。2小節目はドッペルドミナントだが、のっけからこれでノックアウトである。9度の属和音の使い方、転調におけるm7(b5)と7(b5)の微妙な使い分けなど見事なもので、後半の半音階の使用も実ににくい。単なる倚音ではなく#9の音を響かせたり、最後のa の音も9度音で、次の主和音の5度に見事に滑り込む。

f:id:jun_yamamoto:20201201183706p:plain

 

Poulenc Sextet FP.100 Movt. 1

プーランクの有名な6重奏の第一楽章、バスーンのソロの後、ピアノがソロで出てくる部分。調性的にはかなりきわどいところを綱渡りするフレーズ。

一応コードネームをふってみた。⇒は機能和声的な進行。〇で囲んだのは何らかの非和声音である。譜例の4,5小節目の後半なんかは和声がばらばらになる寸前まで行っている。上声の半音進行だけで支えられているような繋がり方である。

赤い線で示したのは対斜ないし、同時に半音違いの音が鳴る部分である。

f:id:jun_yamamoto:20201123180902p:plain



www.nicovideo.jp

Schubert Piano Fantasie (4 hands) f moll D940

某所で話題に上ったD940であります。まことにシューベルトらしい美しさとシリアスな音楽探求のないまぜになったような作品です。細部を見てみるといろいろと面白いところがあります。

この一瞬の#5(増5和音=オーグメント)がなんとなくベートーベン風味。

f:id:jun_yamamoto:20201120103525p:plain

単純そのもののテーマが長調になって出てくるところ、一瞬ヒヤリとしますが、大丈夫、減和音(刺繍和音)でバカみたいになるのを避けています。

f:id:jun_yamamoto:20201120121546p:plain



youtu.be

Chopin Polonaise Ab major op.53

ショパン英雄ポロネーズの冒頭部分。

これがなかなか一筋縄ではいかない。基本的には属音のEbから主調のAbへの5度進行なのだが、いろいろ紆余曲折を経る。

f:id:jun_yamamoto:20201004105706p:plain

2小節目の3拍目は見かけ上E7だが、解釈としてはBb7b5の主音が抜けた和音ということになろうか。3-4小節目の繰り返し音型は倚音を取り去ればEbの和音であるが、音階的には Ab Bb Cb D Eb Fb G Abとなり、Abマイナーに2箇所増2度を含む民族調の音階となっている。

5小節目冒頭は、Fbの和音をEbに乗せた形で緊張感が高い。6小節目の3拍目はEb7b9から主音のEbを抜いた形でこれが全音上のFbに解決する。

7-8小節目は3-4小節目と形は似ているがここでは増2度を含まない、Abマイナーの自然音階となっている。

9小節目冒頭でやっとF7/Eb という比較的クリアな響きとなり、Ebの低音を保持したまま、11小節目でBb7/Eb 、13小節目冒頭でやっと属和音Eb7が完全な形で姿を現す。

 

youtu.be

今井美樹 ひまわり(布袋寅泰・作曲)

岩里祐穂・作詞、布袋寅泰・作曲、今井美樹の歌う「ひまわり」。一瞬、「あれ」と思う転調がある。

f:id:jun_yamamoto:20200917100504p:plain

捕えてみれば我が子なり、ポップスの王道、I7からIV度への展開なのだが、ここでの工夫はそのIV度がマイナーになっていること。言い換えれば、A7からDm7でこれ自体はなんの変哲もないV7-iなのだが、文脈としては、F#minor から A major に終止して、それが、Cmajor (あるいはA minor)のII度に移行することで、短三度上への転調を成し遂げているのがフシギ感の原因であろうと思われる。

 A minorからもとのF# minorに戻るところは、E7 F#m という、クラシックでいうところの「偽終止」の形(属七からバスが一音上がって短三和音に解決)になっています。

 

f:id:jun_yamamoto:20200917155454p:plain

F# minor >  A Major > C Major > A minor > F# minor

 

open.spotify.com