「春の祭典」の練習番号91では、ヴィオラが6 Vle. solo と指定されている。妙なのはここだけ調号(H dur)が指定されていることだ。ヴィオラのソリ以外はチェロとコントラバスのハーモニクスを伴うオスティナート(e fis cis h)でここは曲の他の部分同様調号なしである。
ここだけH durを感じて演奏せよということだろうか。しかし、スコアは全くストレートではない。ヴィオラ3つはト音記号で、残りはハ音記号で書かれているので、なんとなく3つずつに分かれているという感じだが、チェロ以下を適当にはしょって書いてみると:
減8度(短2度、長7度)の嵐。それも一筋縄ではいかない和声になっている。
冒頭Aの和音、上がBm下がBで、dとdis が減8度。最初から喧嘩売ってるだろ。
この和音は聞き覚えがあるやつで、あの不気味な「星の王」に頻出したような気がする。
Bの和音もcとcisの減8度を含む。A7b9#9っぽいかなぁ。
CはAと同じと思いきや、最低音はhではなくhisになっており、dはオクターブだがhとhisでこれも減8度。c d fisが鳴るのでD7でhが倚音っぽい感じかな。
Dも聞き覚えのある和音で、cis上の減七和音にcを加えたような響き、転回すればC7b9かもしれないが、むしろこれは練習番号13の有名な和音 fes as ces fes g b des es=e gis h e g b des es の上4声を思わせる。
EはA7b9と解釈も(無理やり)できるかもしれないが、a とais (b)が増2度でぶつかっている。
Gはこの部分をしめくくる和音でG#mがAの上にのっている。
全部に言及できない(する必要もない)が、ストラヴィンスキーの調性に対する感覚のよく現れた経過句である。
https://youtu.be/rP42C-4zL3w?t=1260