ディーター=デ=ラ=モッテ(Diether de la Motte)の大作曲家の対位法( 瀧井敬子・訳)に大バッハのBWV815のガボットについて「この曲は桁外れに不協和な響きがする。この曲では不協和音がひどく目立つのだといった方がよいのかもしれない」といって2ページ近くにわたって(翻訳の304-306ページ)かなりくさしている。
曲は短いものである。音はこちら。不協和な部分がよくわかるようにわざとゆっくり演奏している。
赤で囲んだのは、モッテの言い方では「予備のない掛留」すなわち倚音である。赤の四角で囲んだのは私が「いかがなものか」と思う部分である。2小節目第一拍裏の8分音符は完全4度からの完全5度の並達で、いかにも不器用だし、4小節目頭も何をしたいのかよくわからない。後半、繰り返し記号のあと1小節目の下降する並達8度は上声が短7度の跳躍をしていて無理すぎる。後半5小節目の最初の拍も同様に上声が跳躍して短7度に着地するのはいかに反行とはいえ無茶である。後半12小節目も下に完全4度上に短7度をもつ響きの悪い和音で、これならわざわざ中声のesを入れた意味がわからない。などなど。
僭越ながら(全く僭越だ)それらの部分を修正したものがこちら。