チャイコフスキーの悲愴を取り上げるのは「私の記憶がたしかならば」二回目。第3楽章のブライトコプフの楽譜で練習番号Dの部分。
同じ音形がバスの上で、バイオリン、クラリネット、ビオラ、ホルンと受け渡されるのですが、ちょっと変わった響きになっています。和声的には最初のバイオリンがDの和音(所謂ホルン5度)で、次のクラリネットがEb7(バスのC#はEb7の7度音のDbと同じ音)、ビオラがEの和音でさらに半音上、最後のホルンがBb7 になっていますが、バスのBbを中心に考えればそうなりますが、旋律はDのディミニッシュというべきでしょうか(D,E,F,G,G#A#,B,C#)。音はこちら。
最初の時にはテーマ部分のどんどん下がるベースラインを取り上げましたが、おなじスコアで練習番号CCの部分の延々下がっていくベースライン。
延々と19個の和音が繋がりますが、繋がり方はいろいろで、
D→C7 主和音から全音下のVIIbに入る
C7→B7 半音下へ七の和音の並行異動
B7→C7 もとの和音にもどるが転回形をかえて7度音をバスに
C7→A 短三度下への移動 VI へ
A→G 全音下への移動 属和音から下属和音への弱進行
G →B7 長三度上への移動 Gから見ればIII7へ。
B7→E やっと出てきた普通の5度進行。
E→F7 半音上への進行。一種の偽終止。
F7→D 短三度下への移動。
D→Eb7 これも偽終止型。
Eb7→E 同上。
E→A 5度進行。
A→Bb7 偽終止型。
Bb7→G 短三度下への移動。
G→F これも弱進行。
F→A7 長三度上への移動。
A7→D 5度進行。
D→Am 5度和音の短三和音へ。
ここで、最後がAmになっているのが気になります。二つ前の和音ではA7で高らかにC#をならしていたのが、ここで、バスにCナチュラルがくるのですが、これは間接的な対斜であり、異例な処理です。気になる。トップのラインが C# D E といったら、バスは E D C#と行きたいところ E D C になってるんですよねぇ。うーん、気になる。音はこちら。