ベートーベンの10番の弦楽四重奏曲の第3楽章は、お得意の1小節一拍で振らないと振りきれないスケルツォである(速度表示はPrestoになっている。)
最初から飛ばしていく、急速な音楽であるが、途中でpiu presto quasi prestissimoになる。
そこまでも相当過激な音楽なのだが、この部分で、ベートーベンは完全に突き抜けてしまい、別世界に突入する。譜例に示したように、ところどころ申し訳程度にr (retard=掛留音)があったりするが、まず掟破りの音楽である。
チェロの4分音符の流れの上にビオラがテーマらしきものをのせていくが、ほぼ音楽的とは言い難い旋律である。譜例の20小節目では第二バイオリンのCは掛留だが、二オクターブ上で第一バイオリンが構うことなくCーBとまたがって降りてきてしまうわ、29-30小節ではバイオリン二本で平行8度になってるわ、もうえらいことになっている。
しかし、この部分こそが、音楽を向こう側へ超越してしまうベートーベンの真骨頂であるのですね。
(21'40”くらいから当該部分)