先日の続きです。
ラヴェルの弦楽四重奏曲第4楽章の冒頭から次の部分、8分の5から4分の5に変わるところからです。テンポは8分音符の長さがそのまま4分音符の長さになりますので、テンポ感は変わりません。相変わらず急速調です。大譜表に簡略化したものを示します。反復音型とトレモロは省いてあります。
音はこちらです。
1,2のメロディー(A G A E F G E)は私にはDのエオリアンあるいはニ短調に聞こえます。また、1の赤枠、3の赤枠で終止感があるのと、全体にAの音がドローンとしてなっていることから、Aを5度音とすればニ短調和声的短音階ですし、主音とすれば、5に示したように5度音からはじまるニ短調和声的短音階ということになるでしょう。
伝統的な書法からはかけ離れています。1の部分、メロディーに対して半音階で動く減七度=長六度(C# Bb)(D B)(Eb C)が不思議な音型です。最初の和音をAb7b9ととらえると、掟破りの主音が9度音の上に来た配置となりますし、長七度できびしくぶつかります。また、4拍目もEbとEが増八度(って言うのかな)でぶつかってきわめて不協和です。しかし、全体としては美しい。半音ずれた音を加えると6のようなスケールになるかと思いますが、やはりBではなくBb、CではなくC#、EbではなくEが中心のように思えます。
この曲はドビュッシーが絶賛してラヴェルに「誰が何と言おうと一音たりとも変えてはいけません」と言ったといいますが、実際にはフォーレあたりの助言を容れて、かなり直したという話もあります。しかし、この部分がこの形で残っているということはもっと過激な部分がオリジナルにはあったのでしょうか。