ストレートなドイツ風「うれしい!」を表現した第4楽章ですが、主題の提示を終わって、繰り返し記号を超えて展開部に入るとハ長調の属七和音(G7)にいきなりつなげて、並行短調、イ短調の属七和音(E7)がドシャ―っとなって、さあ、どうするだろうと見ていると長い転調のフレーズが続きます。…(フランツ・リスト大先生の力作ピアノ編曲を使わせてもらいます)
この最後のところでE7に飛び込みます。
んでもって、
とりあえずイ長調へ。そのあとヘ長調(C7-F)ニ短調(A7-Dm)ト短調(D7-Gm)ハ短調(G7-Cm)ト短調、イ短調、変ロ長調(F7-Bb)、変ロ短調(F7-Bbm)
特に、メロディーが a g f fis g a b h c d es e fと上がっていくところの和声付けはばっちり機能的になっていて圧巻です。
これはそのあといろいろな人に変形をされて繰り返し利用されているのではないでしょうか。
変ニ長調を経て、変イ長調から懐かしいハ長調にもどってきてやれやれですが、終わりの方は減七和音を多用していてややだまされた感があります。それでも変ロ短調までいっていますから、ハ長調から変ニ長調の平行調へということでかなり遠くまでいったことになります。ヘ短調を経てAbdimでDナチュラルが導入されて変ホ長調にたどりついてドッペルドミナントのD7からやっと属和音のGが戻ってきます。
長い旅でしたが、不自然さのない転調はさすがはベートーベンです。この後の部分では、Fの長いペダルの上でBbdim からBb、Bm-5というスリリングな展開からF#dim=D7に入ってドミナントのGに至るという聞かせどころもあります。
このフランツ・リストのピアノ編曲については、グレン・グールドによる演奏があるのですが、もともと無茶なアレンジのところ、グールドがきちんと弾くためにそうとうテンポの遅い録音になっていました。
故・芥川也寸志さんが、ラジオの番組でこの演奏を紹介して、「中国語ではピアノのことを『ガンキン』(鋼琴)というんだそうですけど、この録音いかにも『ガンキン』っていう感じがしませんか」といって、笑いを取っていました。