交響曲の父、ハイドンの最後の交響曲の終楽章である。スケールを繰り返してひと騒ぎしたあと、すっと静かになるところで心憎い転調をしてみせる。
84小節目でA Major からすっと引いてB minorになる呼吸が美しい。図式的に大譜表に書いてみる。
がちゃがちゃした楽想のところもハイドンは手を抜いていない。一つの8分音符も美しく響くように計算されている。そして、上の譜例では5小節目、E7で一旦止まって、pianoでF#7を導入する。この部分はB minorで、聞かせどころである。さりげなくA Majorにもどって、一旦終止する。
ハイドンは天才ではなかったかもしれないが、努力の人だと思う。その書法のきめ細かさには敬服する。