ピアノコンチェルトといえばまずこの曲というくらい有名な曲であるが、相当変わった曲でもある。有名な冒頭部分のメロディ(変ニ長調)はどうも第一主題というわけではなさそうだし(再現しない)、つぎつぎと楽しいメロディーが湧き出てきてソナタ形式の枠に収まらない。
とりあえず冒頭の和声の扱いからしてユニークである。
ホルンに導かれて最初に鳴る和音は主和音(Bbm)に7度(Ab)のバスを伴ったものであり、そのあとチャイコフスキー一流の偶成和音的経過を経て、並行調の変ニ長調に落ち着いて最初のメロディーが始まる。ここを模式的に書くと次のようになる。
ここでAbでスタートしたバスはG Gb F Fb Ebと半音ずつ下がっていき、Eb Ab Dbという進行で並行調の変二長調を確立する。
で、有名なテーマは飛ばして、そのあとのピアノの第一カデンツァであるが、
(イ)の部分から減七和音の嵐で、調性があいまいになる。特に気になっていたのが、最後の方のBのダブルフラット(Bbb)である。これが出てくるということは、変へ長調ないし変二短調を想像させるのだが、このメロディーは主調の変ロ短調ではないだろうか。そうだとすると、このダブルフラットはAナチュラルで書かれるべきだと思うのだが。
この部分を模式的にあらわすと次のようになる。
(ハ)の部分はおそらく変二短調でBbbでいいと思うのだが、(ニ)以降は赤丸をつけたAは楽譜上Bbbで書かれているのだが、音楽的にはAでいいのではないかと思うのだがいかがだろうか。先達のご意見をお聞きしたいと思っている。