Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

Berg Piano Sonata op. 1

ベルクがシェーンベルクに師事して、一種の卒業作品として書いた一楽章のピアノソナタだが、あらためて譜面を見るとその異様さに気づく。

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ダイナミクスとテンポの変化がきめ細かく記されている上に、アクセント記号、スフォルツァンドの書き分け、それと5-6小節目の一音一音に記されたクレッシェンドとディクレッシェンドの繰り返し。言うまでもなく、こういう表現はピアノではまず不可能であるから、そういう気持ちで弾けということなのであろうが、右手左手の指示も加わって譜面はきわめてせせこましくなっている。

一方で変拍子はなく、連符もかろうじて三連符があるだけである。行き着くところまでいったロマンティックなのであろうか。師匠のシェーンベルクも結構書き込んではいるが、これに比べればあっさりしている。

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テンポは揺らしているし、ダイナミクスの変化もあるが、ベルクほどではない。音符が細かかったり、無音で鍵盤を押さえることによるハーモニクスとかはあるが譜面は比較的シンプルだ。因みに同時期(20世紀初頭)のR.シュトラウスの、これは歌曲の伴奏のピアノパートだが、あっさりしたものである。ストラヴィンスキーにいたってはほとんどテンポは変化せずに機械的に音楽は進む。アクセントすら最低限だ。

ベルクに特有のこの「過剰」は作曲家の本質を示すものだろうと思われる。骨の髄からロマンティックなのだ。十二音で作曲していても「抒情組曲」であり、彼の好きな悲惨なストーリーのオペラもなお、ロマンティックである。

 

中川俊郎先生の超作曲講座を勝手に受講してみる

中川俊郎先生(@t_nakagawa_jscm) の超作曲講座。Twitter から勝手に転載させていただきます。

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●素早く上達する作曲教室〔その1〕。(1) まずあなたが生理的に受けつけない、自分の曲だったら金輪際使わない(控えめに言っても好きでない)和音をひとつ選びなさい。(2)その選んだ音を含んだ10秒位の小品を作曲し、ピアノで弾いて発表しなさい。

●素早く上達する作曲教室〔その2〕。(1)小さな五線紙を7枚用意して、各々に自分の好きな和音1個(単音でも良い)か、2音からなるメロディ(和音つきも可)の何れかを取り混ぜて書く。但しどの音で始まってどの音で終わっても良いように音を選ぶ。

(2)他人に、特に音楽の心得の全くない人に当てずっぽうで順番を決めてもらうか、ガチに音楽家に順番を決めてもらう。それに異議申し立ては出来ない。どの音でも始め終われる…という条件で音を選んでいる筈だ(^_^)v。

最後に各断片の音と繋ぎの休符の長さを決め、必要なら繋ぎの休符の替わりに、短いブリッジを作って加える。 これらの方法(特にその1)はハードルが高い分効き目がある。人によっては勉強を500年分短縮するだけの効用があるかも。(200年後が作曲家である確率はまずないにしろ、形を変えて勉強は続く。)

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500年短縮されると聞いては放ってはおけません。早速やってみる。

まず、その1。生理的に受け付けないのは左の和音。

これにいろいろ付け加えることでなんとかならないかと、数時間やってみたがダメでした。この和音はようするにAの長三和音に完全4度のDがのってるだけなのですが、ジャズでいうところのいわゆる「アヴォイド」なので、結構気持ち悪い感が強力。そこで、邪道かとは思うが、掛留にあつかうことにした。逃げます。逃げましたよ。どうせ逃げですよ。(何を開き直っているのか)音はこちら

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その2は上の段が最初に用意した7つの断片。下の段が、ランダムにシャッフルして、間の休符を適宜挿入したもの。音は下段のみ、こちら

 

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中川先生のご趣旨にあっているかどうかは全く自信なし。でもこれで500年分作曲が上達するならありがたい(<ありえない

 

 

 

音楽。生演奏と録音と打ち込みとインターネットと。

以前、友達の友達くらいのジャズピアニストの方が「CDなんて(録音なんて)音楽ではない。音楽は、ライブで聴いてはじめて意味がある」という趣旨のことをおっしゃっていて「じゃああなたのCDはナンなのか」と聞きたいところだったがそれはともかく…

作曲というのはついついやってしまうものなのだが、これを演奏するとなると大騒ぎで、仲間内を糾合してやるにしても、手間も費用も時間もかかって大変である。学生時代ならそれでもなんとかがんばってLPの一枚くらい作ったことがあるが(SK先生その節はありがとうございました。立派にヤフオクに出てるらしいです。売れてないみたいですけど)社会人ではとても無理。それでもやってる人がいるから凄いが。(Wさんあなたのことです)

90年代にDTM(Desk Top Music)がそこそこのクオリティで実現できるようになって、いわばMIDIの打ち込みでもなんとか音楽らしいものができるようになった。ニフティMIDIフォーラムの皆様、その節は大変お世話になりました。m(__)m

打ち込み音楽というのも大変面白いと思うし(何しろ超絶技巧は朝飯前、どんなに変な音楽でも嫌がらずに演奏しちゃうのだ。あのM師の88台のピアノ同時演奏曲ですら)いまや商業音楽の相当部分も打ち込みが制覇し、逆に生演奏の復権が叫ばれているくらいで、世の中変われば変わるもんである。あれだけシゴトを奪われているのに、それでも演奏家はどんどん出てくる。つい作曲をしてしまうように、つい演奏してしまうんだろうな。(違うかもしれない)

打ち込みで作った音楽というのは、先ほどいったジャズピアニスト氏などに言わせたら音楽以前ということになりそうだが。いずれにせよ、打ち込みで音楽を極めるも十分ありだと思う。(この辺はかなり以前とは考えが変わった)

他にも例をあげればいいのだが、ふと思い出したので書いておくと、すでに大昔にPSY'sあたりで打ち込み音楽は市民権を得ていたと思う。松浦さんすごい。PSY'sの場合はチャカさんの強力な歌唱の威力もあったわけだけれど、そのうち初音ミクみたいなものが出てきて、状況は横田順彌さん並にはちゃはちゃになってきた。横田さん、72歳かぁ。時の経つの速すぎ。

一方で、インターネットの発達は爆発的で、いまやYouTubeにない音楽は世の中に存在しないのと同じ(ってどなたの言葉だったか)だそうである。だから、作曲して打ち込んで、そのままYouTubeに流せば(全世界に向けて)発表することができる。ほぼ増分コストゼロでできる。

もうここまでくればあえて生演奏にこだわる必要もなかろう。なにを隠そう私は唯一生で演奏できそうな楽器はピアノくらいだが、下手なんである。できれば人前では弾きたくない。打ち込み万歳である。打ち込みも手間はかかる。そのせいで頚椎症を患っている身としては、最小限の努力にとどめたいが。

また、正直なところ、音楽生活のほとんどはiPodとイヤホン(あるいはアンプにスピーカー)で完結してしまうのであるから、ステレオの録音だけあればいいということにもなる。ただ、面白いのは生演奏を録音して再生すると、打ち込みにもない、生演奏でもない、そういう魅力が立ち現れることがある。このあたりが、生演奏と録音技術のせめぎあいの面白いところですね。

MIDI打ち込みにしろ、生音を扱うにしろ、DAWが強力になってきているし、ついにSONARなんかBandLab.に買収された上、フリー(タダ)になってしまった。

ということで、作曲から演奏、発表にいたるまで、あまり金をかけずに、全部デスクトップでできる時代が来ちゃったわけですね。もう言い訳はできないのだよ>自分

結論は陳腐である。MIDI打ち込みも、ヴォーカロイドの音楽も、生演奏にこだわるのも、即興演奏にこだわるのも、即興演奏を録音して固定してから楽しむのも、なんでもありじゃないか、ということだと思う。(その辺で手を打とうじゃないか。<誰と)

さて、あたしゃどうしよう。

Mozart String Quintet g moll K516 Movt. 3

モーツァルト、K516、g mollクインテット、第3楽章、14小節目。なんか気になる。第2ヴィオラのgと第2ヴァイオリンのgesが同時に鳴った上、gはaに上がるのだがチェロのfにつながって聞こえるのもうまくない。gをgis にするか、b a g a ではなくb a b cにして15小節目頭に別にaを持った方がいいのではないかと。

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Mozart Piano Sonata K281 Movt. 2

ここのダイナミクスは悩むところですね。手書き稿の二段目、1小節目にフォルテ、なぜか4小節目にピアノの指定がある。5小節目にピアノならまだわかるのだが。しかも右手は明らかに4小節目にピアノが書いてあるが、左手は小節の最後にかかっていて、かならずしも明瞭でない。

モーツァルト本人に聞いたら軽く「ごめん、間違えた」って言われそうな気もするが。

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Mozart Piano Sonata K280 F dur Movt. 1

モーツァルトにケチつけ、その2。

ヘ長調ピアノソナタK280の第一楽章だが、これもモーツァルトの耳がよすぎるせいなのではないかと思うのだが…17小節目から(音はこちら)。

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19小節目、21小節目の赤で囲んだ部分が気になる。とりあえず4声体にして、適当な和声付けを検討する。音はこちら

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最適解かどうかはともかく、これならそれほど気にならないと思うので、オリジナルにはめ込んでみた。音はこちら

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同音反復ができたりしてかっこ悪いが、少なくともオリジナルの気持ち悪さは回避できたように思う。

再現部での和声処理はもっとすっきりしていてこの気持ち悪さはない。音はこちら

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(追記)作曲家のD・K先生から(いつもありがとうございます)19・21小節の三拍目はバスにそれぞれDとBbを持たせて次の小節で7度の掛留にしたらどうかというアドバイスをいただき、いろいろ検討の結果、こんな感じに。音はこちら

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Franck Violin Sonata 1st Movt.

超有名なフランクのヴァイオリンソナタ。第一楽章の第二主題。そもそも第一主題はさらっとした9度の和音の分散和音。第二主題は少々手がこんでいる。

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要は、繰り返される赤枠で囲んだ和声進行が発明である。V7から長三度下の長三和音の第一転回形にバスを動かさずにつなげるという、それだけのことなのだが、大変効果的である。3小節目は少々例外的だが、ほぼ5回同じ形を繰り返して第二主題を印象付けている。音の性格が非常にはっきりしているために、パクり難いのが難点である。音はこちら