Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい http://jun.la.coocan.jp

Bartok Violin Concerto No.2 Movt. 1

ハープの話になって思い出したのがこの曲である。冒頭、ハープのnon arpeggio の4つ打ちから始まる。スコアを見ていて、ハープが効果的に使われているなぁと思っていたら、284小節目からの4小節は相当厳しいのではないかと思った。

楽器の数が少ないので、expressionを全部はずして骨組みだけ示す。音はこちら

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作曲者は、ハープのペダリングを示していないので、仮にペダリングを付記してみた。エンハーモニックを使ってもう少し簡略化できるかもしれないが、これはハープ奏者は結構忙しい。

全体の和声構造をテキトーに解釈して一番下の段に示してみた。

だいたいにおいて3度積み重ねの和音を中心にしていて、長三和音+短三度音をぶつけるとか、伝統的な和音に厳しく不協和な音を付加するという形が多い(「単なる#9thだよ」という向きもおありだろうが)。横のつながりは一見無関係に飛び回っているように見えるが、常に1-2音の共有音を残してつながりをつけている。第一第二バイオリンが4分音符で基礎的な和音構造を与えて安定感を確保している。

このソロ・バイオリンパートは覚えにくそうだなぁ(笑)

 

 

 

Prokofiev "Peter and the Wolf"

プロコフィエフの調性の自由自在な扱い方は作品群の随所に見られるが、非常によく知られた代表的な例として「ピーターと狼」の冒頭部分(ピーターの主題)を見てみたい。音はこちら

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最初の2小節は伸びやかなハ長調で何事も起きないかのように思われるのに、3小節目でいきなりAbに飛ぶ。このメロディーも曲者で、Eb Major として(移動ドで)ドードソドードソ、ドーソーソーではない。もちろんAb Major としてソーソレ、ソーソレ、ソーレーレーでもない。BbではなくBナチュラルが入ってくるので、あえて言えばドードソ#、ドードソ#、ドーソーソーである。和音記号であえて書くなら、AbMaj7 +9 ということになろうか。この音に説得力をもたせてしまうのがプロコフィエフの天才であろう。4小節目の最後の和音は、Ebが変化した偶成和音ということであろうか。同じEbへ繋がるが、変化をもたせている。

5-6小節目は変ホ長調の主和音であろう(Eb)ヴィオラが間にCを挟んだり細かい芸はしているものの、最初の2小節の繰り返しである。

平和は7小節目に破られる。Bmの和音がくる。Eb から Bmへ。Eb G Bb から B D F#へ。長三度(減4度)下がってしかも短三和音になるというショック。しかし音楽は何事もなかったかのように主調であるハ長調のドッペルドミナントたるD7を経てドミナントに至り、ハ長調の主和音に解決する。

この8小節はのびのびとした雰囲気でありながら、トンデモない大冒険に出かけて帰ってくるという意味で主人公ピーターにぴったりの主題となっているわけである。

 

 

Yumi Arai (Matsutoya) "Hikouki-gumo" ひこうき雲 Reharmonized

稲垣潤一さんがデュエット・カバーアルバム「男と女」で、小野リサさんとともに荒井(松任谷)由実さんの「ひこうき雲」にチャレンジしておられます。

ボサノバに仕立ててあって、極めて軽くなっていて大変面白いのですが、ほのぼのとreharmoniozationが施されているので取り上げてみます。

荒井由実オリジナルはEb で、稲垣=小野バージョン(以下IOバージョン)は最初はDbで始まっています(途中で転調してしまいますが)。ここではわかりやすさを最優先にしてCで書いてみました。

上段がオリジナルのコード進行(本当はバスが動くのでこの通りではありませんが)で、下段がIOバージョンのrehamonization後のものです。間違っていたらご指摘よろしくお願いします。

音はこちら。前半がオリジナルバージョン、後半がIOバージョンです。バスの動きは省略しました。

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この曲の肝は譜例の11小節目、サビの3小節目でGm すなわち主調のVm あるいは Vm-I7 という主調のIV度へのアプローチにあります。ユーミンオリジナル版ではこれをサビまで大事にとってあって、サビで初めてVm(Gm)が出てくるのですが、IOバージョンでは「おいしいものは何度でも」ということで2小節目にしてすでに出てきちゃいます。

1小節目のDm7 3小節目のEm7は主要コード間を音階的に埋めています。4小節目の最後のF7 は次のEm7へのアプローチ、5小節目の後半のG7/Fは見た目はおどろおどろしいですが、実は前のEm7のバスが半音あがっただけです。6小節目ののEm7b5は、同D minor へのアプローチ、7小節目はIV度の和音(F)をII度(Dm7)で置き換えています。

問題のサビの3小節目後半(譜例の11小節目後半)はIOバージョンでは常にII-Vを意識して(Gm7-C7)の形で出てきます。12小節目後半はIV(F)から同主短調の借用和音Fmを通過するクリシェです。最後16小節目の頭のBbMaj7は、属和音であるG7に行く前にbVII度を通過するという、これも常套手段であります。

 

 

Hindemith Violin Concerto Movt.2

ヒンデミットのヴァイオリン・コンチェルトの第二楽章の途中である。どうでもいい話だが、このソロヴァイオリンのパートも覚えにくそうだなぁ(笑)この部分はちょっとだけ、ヒンデミットの手のうちが見えるように思うので取り上げてみた。

ソロヴァイオリンのb moll を思わせるフレーズで入ってきて、弦の伴奏はいきなりF#mである。第一バイオリンがC# ヴィオラがF#で固定された中を、第二バイオリンが A A# B B#(C) Bと半音で動くことで和音が継続して変わっていく。譜例の3小節目からあとは他のパートも動くが、基本的には半音ずつ動いていく。音はこちら

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譜例の5小節目2拍目からは、チェロと第二バイオリンが完全5度で平行移動していく。この部分では絃楽器はほとんど半音で移動しているのだが、7小節目の矢印の部分のチェロだけ、F#からEに全音で移動している。ここをFにしてしまうと前後のつじつまが合わなくなるのであろうな。

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譜例10小節目の第二バイオリンとチェロがオクターブになるのが少々気になるが、第二バイオリンはきれいに半音で降りてきているから、それほど問題ではないのかもしれない。譜例の11小節目では弦楽合奏は、9度音を除いたminor 11th になって並行移動していく。ソロヴァイオリンは、伴奏に対して合っているような合っていないような絶妙の距離感をとりながら下降してくる。

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YouTubeにあるオイストラッフの演奏(絶妙)では、上の譜例の部分は12'49"あたりから始まる。

www.youtube.com

 

Mozart String Quartet No.15 d moll KV421 Movt. 4

モーツァルトは奇跡のような曲をたくさん遺しているので、奇跡的だと騒いでも仕方ないのだが、この曲もひとつの奇跡のように思う。なかんずく、終楽章はかわいらしい奇跡である。そうとは書いていないが、8分の6のシチリアーナによる変奏曲。譜例に示したのは第2変奏にあたるが、第二バイオリンが大活躍し、細かなダイナミクスの指定とともにリズミカルな大変面白い効果を上げている。因みに、譜例の7小節目冒頭はEb on G で、これはニ短調ナポリの六度である。

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youtu.be

MYM(Masochistic Yellow Medicine) Live at 横浜 Hey-Joe

夕べは、このライヴを聞きに行きました。

日程:2017年6月3日(土)
会場:横浜 Hey joe
Masochistic Yello Medicine (MYM)
Reddyo(Vo & Voice)
稗田 麻実(Pf)
成川 正憲(Gt)
西村 雄介(Ba)
山崎 彰(Dr)

以前、自由が丘マルディグラで聞いたときとはかなり印象が異なります。場所がゆったりしている分、出音はよかったと思います。特に後半のドラム・ソロなど、前回も「かなりまとまりが出てきた」という感想を書いていますが、よく響いていたように思います。細かい音符がきちんとおさまるところにおさまるのがよくわかる。

それと、マルディグラの時は失礼ながら存在感の薄かったギターが、自らのオリジナル曲を3曲も入れるということで、ずいぶん前に出てこられて、一種双頭バンドの様相を呈してきましたね。成川さんのソロで始まって、稗田さんのアコースティックピアノが入ってくるなんていうのは定番ですが、非常に魅力的な響きですよね。ギターは今回は音が太く、前に出てくる感じで大変よかったと思います。いわゆるオーヴァードライブを聞かせた伸びる音ではなく、クラシックギターに近いアプローチをとっておられるのがユニークだと思います。

Reddyoさんのオリジナル曲もよかった。ご自身でも言っておられましたがファンキーなものが根っこにあってお得意なのだろうと思います。だから、オリジナルとかEW&Fなんかはとてもよく合っている。CDでも聞かせていただきましたが、スタジオ録音ではもちろんすべての楽器がクリアに録れているのでいいのですが、Hey-Joeのようなライブハウスではモニター含め苦しいように思います。ただ、稗田さんの曲の(難しい)ラインを裏声で追うのは、サウンドとしては魅力的です。

出音という意味ではローズも難しいですね。マルディグラでもそうでしたが、ローズの音の本来の美しさが上手く通らないのですよね。印象としてはローズとギターとヴォーカルが団子になってしまうような(たとえが悪くて申し訳ないですが)

話は変わりますが、ファンとしてはもっとベースに主張して欲しいですね。ドラムスがあれだけ派手に暴れているのだから(笑)遠慮する必要なし。もっとバリバリいって欲しいところであります。

聴かせていただいたCD(WAHN)は大変楽しく美しいものでした。ライブの音響の問題がにつきまといますが、こればかりは解決が難しいですね。ただ、今回はグランド・ピアノの音がそこそこ通っていたので、アコースティックピアノに多少軸足を移すのも悪くないかも。でもそうすると稗田さんのローズ的な微妙なコードワークはなくなるんですよねぇ。帯に短し襷に長し。難しいものです。"WHAN"はローズの音がキモでしょうが、端的に言えばライブハウス向きでないのかもしれません。

Dvorak Symphony No.9 "From the New World" Movt. 2

超有名曲であるし、アナリーゼもあるのだろうが、自分で参加することに意義がある、というオリンピック精神の下(?)やってみた。

スコアは、臨時記号のつけ方についてあまり統一がとれていない。最大公約数をとって略式のピアノリダクションを作ってみた。(音はこちら

最初の部分はこんな感じになる。

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3小節目のバスのa とcisだが、ファゴットパートではbes とdes トロンボーンパートではa とdes で書いてあり、混乱している。(Berlin: N. Simrock, 1894)

ここはフラット系に統一してみた方がいいかと思って、フラット系に揃えてみたらこうなった。

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この5小節は、まるまるドヴォルザークの発明だと思ったほうがいいのかもしれないが、一応、理屈をつけてみると、赤字で書き込んだようなことになるのではないか。

Db Majorであるという前提をおいて、最初の和音(Fb)はDb Majorの同主短調であるDb minor (des es fes ges as b c )の三度の長三和音 i(III)

二つ目の和音は、Db Majorの2度調であるEb minor の属和音 ii(V)

2小節目頭は、同じくi(III) 後半はDb Major の主和音(主和音にはぜんぜん聞こえないけど)

3小節目頭は、Bbb で、これは同主短調 Db minor の6度の和音 i(IV)。次は自然に(?)4度の和音i(iv)、そして主調であるDb Major の主和音に到達する。

まー、こんな分析しても虚しいですな。これはこれでひとまとまりのドヴォルザークの創作でありますからね。

ついでに、有名な主旋律(「家出」じゃないや「家路」か)も見ておく。

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3小節目の頭まで、バスをdes as で固定してあるのがいいですね。そしてバスが3度あがって、かつas が a になって増三和音になるのが実に効果的。中間部をはさんで、16小節目に至って初めてバスが下降してくる。17小節目はドミナントだが、Ebm7 on Ab あるいは Gb6 on Ab として、導音になる c を隠して、モーダルな感じ。この曲はこの後出てくる中間部を含め、無駄がない名曲ですね。ドヴォルザークは妙に展開部とか動機労作とかしないほうが(ry