Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

クラシックのおいしいところをつまみぐい 

4-voice Canon at 6th descending 6度の4声カノン

同度およびオクターブを使った4声のカノンはまがりなりできた。まがりなりだけど。では、他の音程の4声カノンもできるのではないか。

他の音程の2声カノンあるいはそれに自由声部を加えたものは大バッハがたくさん書いているが、4声はあるのかな。知らないだけ?

やってみました。

6度ずつ下がって入りが4回ある4声カノンです。まがりなりだけど(笑)。

 

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4-voice Canon descending 6th

入りは4小節ごとで、c mollからスタートして、Es dur  g moll B dur d moll F dur As dur を経てc moll の入りが一回あります。終われないので最後にc mollのコーダをつけて実施したものが下。音はこちら

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Canon a 4 四声のカノン

J.S.Bachは音楽の捧げ物のなかでいろいろなカノンを書いているが、中に4声のカノンがある。調べてみるとかなりのムリゲーで、さすがのバッハも結構苦労していて、四六の和音が出てくるのはいいことにしたらしい。

つい、気の迷いで4声のカノン、上等じゃないの、という気になって書き始めてしまった。書いているうちに多少コツはわかってきたが、もちろん大バッハのようには行きません。でも面白い。一種のゲームですな。先に言っておくと四六の和音はたくさん出てきます。バッハはそれも準備して置いているのでさすがですが、私はそこまで行き届いたことはできませんでした。

カノンの本体はこれ。

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大バッハのはソプラノ3声とバスの4声なのだが、ここでは弦楽四重奏を想定して、高い声部2つ、一オクターブ下がひとつ、さらに一オクターブ下をバスとした4声とした。最初に妙な音部記号があるのはそういう意味である。バッハも追いかける声部の入る場所の指定はしていないので、ここでも指定しなかった。7小節目から次の声部が入ればうまくいくようになっている。

実施したものを次にあげる。

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バッハは繰り返し記号をつけているので、私もつけてみたが、バッハの場合は繰り返される度に感動をあらたにするのだが、私のはただ無駄に長くなるだけだったorz

一応2回繰り返して、それだけだと終われないので、コーダをつけてみた。

反省点としては、おそらく八分音符が多すぎるのだろう。もっと長く伸ばすところとか、16分音符で走り回るところとかを満遍なく配置しないといけない。

フィナーレとGarritan Personal Orchestraの弦楽合奏による試奏はYouTubeにあげてある(下のリンク)。いやー、カノンって本当にいいもんですね。

 

Manuel Ponce "Estrellita" Heifetz version

先日の三毛子のテルミンライブ「旅するテルミン 南アメリカ~帰国編」で取り上げた、メキシコの作曲家、ポンセ作曲の「エストレリータ(小さな星)」であります。

楽譜はimslpに上がっているので最初の部分だけ示します。

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この曲は、ハイフェッツによる編曲と演奏で有名になったということで、このハイフェッツの編曲が相当なものなのですよ。

下に示したのは、曲の一部を原曲とハイフェッツ版との比較で示したものです。原曲はピアノがほとんど歌のラインをなぞっているので、大譜表で書き、ハイフェッツ版はヴァイオリン・パートとピアノの伴奏にわけて書いてあります。

実はハイフェッツ版は半音高い嬰ヘ長調なのです(ピアニストに対する嫌がらせとしか思えません(笑))が、比較しにくいし、ダブルシャープの嵐なので半音下げてしめしました。原曲版の音はこちらハイフェッツ版の音はこちら

ハイフェッツ版はこのしゃれた小品を言わば後期ロマン派風に解釈したのですね。煩瑣なのでいちいちコードネームをつけませんでしたが、半音階を多用して偶成和音を多数使っています。全部ピアノの音で聞くとほとんど間違っているように聞こえます。(半音下げる時に私が間違った可能性はありますが…)

赤で丸く囲んだヴァイオリンのD♭。伴奏のコードにAをもってきたので寄り添っているのですが、いやらしいですね~(笑)しかもそこへポルタメントであがるんですよ、奥さん。

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実はこのあと大仕掛けが出てくるのですが、それは実演をお聞きください。

最後の部分は、ポンセは簡単にFの和音で終わっていますが、ハイフェッツはここを次のようにピアノに弾かせています。音はこちら

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最初の低いFの和音に、最初の8分音符はFm7(b5) 次はDmにEbを足した和音(?)3つ目は構成音が下からC# G B F A C#となりA7(b5)と解釈できますでしょうか。最後の和音はクリアなFだと思うのですが、元の譜面は一番下がC#(元の調ではC##)になっていますが、これは#に戻すのを忘れたのだと思いますが…凝っている、というかやっぱりピアニストに対する嫌がらせではないかと(ry

ハイフェッツの演奏がYouTubeで聞けます。1939年のThey Shall Have Music(かれらに音楽を)という映画の一場面とのこと。

youtu.be

 

 

 

 

Retrograde Canon 逆行カノンをつくってみた

逆行カノンというのは、最初から演奏するパートと同じ楽譜の最後から逆に演奏するパートが合わさって2声部の音楽になる、というものです。

ここでは、普通に最初から演奏するパートに対し、最後から逆に演奏するパートを2オクターブ下げて2声としています。「とにかく逆行カノンを作った」というだけで精一杯で、バッハのような芸術性の極みには到底達しませんが…音はこちら

(追記:少々修正しました。1月22日)

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Messiaen "modes à transpositions limitées" メシアンの移調の限られた旋法について

オリヴィエ・メシアンの「移調の限られた旋法」modes à transpositions limitéesは、メシアン自身の著書「わが音楽語法」Technique de mon Langage Musical(1944)(新訳では「音楽言語の技法」)で紹介され、広く知られている。

長音階(あるいは自然短音階)は一オクターブ中7つの音が、半音を単位として2-2-1-2-2-2-1 (2-1-2-2-1-2-2)という「不揃いな」間隔で配置されているため、12の調に移調した場合、それらの構成音はそれぞれ異なる。

しかし、この間隔を適当に配置すれば、移調した時に元の音階と構成音を同じにすることが可能である。たとえば、メシアンが第1旋法と呼ぶ全音音階(C D E F# G# A#)は半音上げれば(C# D# F G A B)となるが、さらに半音上げれば(D E F# G# A# C)となりこれは最初のCから始まる音階と実質的に同じものである。

このような「対照性」をもった音階を数え上げていけば、次のようになる。

 

1.移調がそもそも不可能なもの。半音階(これは自明)

2.2半音(全音)の移調でもとにもどるもの 上にあげた第1旋法(全音音階)音の間隔は2-2-2-2-2-2

3.3半音の移調でもとにもどるもの
3-1 3-3-3-3 (C D# F# A) 減七和音
3-2 1-2-1-2-1-2-1-2 (C C# D# E F# G A A# ) メシアンの第2旋法 ジャズでいうcombination of diminished scale 2-1-2-1-2-1のパターンもあるが実質的に同じであるので省略する。

4.4半音の移調でもとにもどるもの
4-1 4-4-4  (C E G#) 増3和音
4-2 1-3-1-3-1-3 (C C# E F G# A)
4-3 1-1-2-1-1-2-1-1-2 (C C# D E F F# G# A A# )メシアンの第3旋法(メシアンは2-1-1-2-1-1-2-1-1としているが実質的に同じものである)
(註:5半音は完全4度であり、オクターブを等分しない)

5.6半音の移調でもとにもどるもの
5-1 1-1-1-1-2-1-1-1-1-2 (C C# D D# E F# G G# A A#)メシアンの第7旋法(メシアンは1-1-1-2-1-1-1-1-2-1としている)
5-2 1-1-2-2-1-1-2-2 (C C# D E F# G G# A#) メシアンの第6旋法 (メシアンは2-2-1-1-2-2-1-1としている)
5-3 1-1-1-3-1-1-1-3 (C C# D D# F# G G# A) メシアンの第4旋法 (メシアンは1-1-3-1-1-1-3-1としている)
5-4 1-2-3-1-2-3 (C C# D# F# G A)
5-5 1-3-2-1-3-2 (C D# F# G A#)
5-6 1-1-4-1-1-4 (C C# D F# G G#) メシアンの第5旋法(メシアンは1-4-1-1-4-1としている)
5-7 1-5-1-5 (C C# F# G)

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メシアンは5-7については4音音階になってしまうので取り上げなかったのであろう。5-4,5-5については、第2旋法から音が2つずつ欠けていると考えてこれも取り上げなかったものと思われる。

「わが音楽技法」に豊富な実作の例が挙げられているので、それで十分だが、「みどり子イエスにそそぐ20のまなざし」の第19曲が第2旋法の非常にわかりやすい応用になっているので、冒頭部分を示す。(ダイナミクスなどは省略、オリジナルとは書き方が異なる部分がある。音はこちら

この部分はF#をペダルとして、F#から始まる1-2-1-2-1-2-1-2の第2旋法(コンディミ)と、半音上、Gから始まる同じく第2旋法に基づいている。

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メシアンの取り上げなかった5-4の形の「旋法」で同じような書法を取るとどうなるか、上の例の4小節目に倣ってひとつ試してみた。使い方次第だろうが、やっぱりあまり面白くないようだ(笑)。(音はこちら

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「移調の限られた旋法」については、松平頼則「新訂 近代和声学」で扱われていたので概要は知っていたのだが、数え上げがちゃんと出来ているのか確信がなかったが、まじめに数え上げたら、さすがメシアン、大事なところはきっちり押さえていることが判明しました。

メシアンはリズムの扱いも含めて、これらの自作の原理を太っ腹にも公開してしまったおかげで、メシアン風の音楽を書くのは誰にも容易になってしまったが、逆に亜流が生まれるのを未然に防いだという見方もできるのかもしれない。

 

The Beatles "If I Fell"

音楽研究者 藤野純也さんのブログで取り上げられていた"If I FeLL"のコード進行はジョン・レノンならでの革新的なものである。探せばワーグナーリヒャルト・シュトラウスあたりに類似の進行はあるかもしれないが、このコンテクストで使うというところが革命的と言っていいだろう。藤野さんも2小節目のDを裏コードと解釈しており、そうすればバークリー的ではあるが、むしろ経過的な和音と解釈することもできるだろう。第2小節でのgis=asが不思議な響きになっている。

 

クラシック的解釈を施してみた…音はこちら

 

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Yonezu Kenshi "Lemon" 米津玄師 Lemon

こういう「要はセンスですよ」みたいな曲をアナライズしても虚しいのですけどね。でもやる(笑)下は"Lemon"のコード進行です。(ブリッジ部分は省略。間違ってたら指摘してね)

youtu.be

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ロ長調(B Major)で、特に難しいことは何もやらず、ポップスの王道であります。赤枠で囲んだところは並行短調(G# minor)への一時的転調で、ドッペルドミナントドミナントD#に対してさらにドミナントのA#7をA#7(b9)として、根音を省略して、C## E# G# Bの減七和音、すなわちC##dim7)が入っています。

青枠で囲んだところは平行短調(G# minor)でのii-V-i(一時的転調)です。ここでのG# minorのii の和音はA#m7(b5)=A#ハーフディミニッシュなのですが、同じハーフディミニッシュを緑枠のところで違う文脈で鳴らすのがしゃれています。

緑枠のところでは主調B Majorのドミナント F# のあとにFm7(b5)=E#m7(b5)という和音が入るのですが、無理に機能的に解釈すればiii度調(D# minor)のii度和音ということになるかと思いますが、さらっと(それでも2拍分)半音下に平行移動して面白い効果になっています。