Jun Yamamoto音楽を語る

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クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

Kaori Nabeshima "Exotic Dance" for Alto Saxophone and Piano

この作品がNHKの朝のFMの番組で流れていて、「おお!」と思ったのが、鍋島作品を認識したはじめ、であった。すみません、遅くて。

大きく上下に展開したピアノのC音の強奏から始まるこの曲は、アルトサックスの最初の4つの音、C E D Bb これでノックアウトされるように書かれている。(譜例は骨格だけを示しており、表情記号などを捨象している。あしからず)

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この4音がExotic DanceのExoticである所以で、この形は後に何度も登場する。それに連なる音を順に並べてみると、最上段のようになるが、このあとピアノに足りなかったGとFもすぐ出てきて、ほとんど12音をカバーしてしまうのだが、ペダルでなっているC音、それに最初の4音に支配されて、調性ははっきりしている。すこしあと、練習番号Aの部分が下段だが、中のト音記号の段がサックスで、音を拾い上げると最上段のようになる。最初の4音(変形されているが)とともに、ここでも調性は健在であるが、ただし、ピアノは相変わらずC音のペダルに留まり、さらに長三和音の第二転回形(いわゆる四六の和音)がたゆたっている。この音形、すなわち四六の長三和音の平行移動はこの後もふんだんにでてくる。

臨時記号のつかない、サックスのカデンツァを経て、Danceはいよいよリズミックな展開を見せる。練習番号Sの部分。

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上の譜例も大幅に単純化してあるのでご注意いただきたい。上段中音域にあるのがサックスパートで、最初D音だけでリズムを奏しているが、F#上の長三和音から始まるこれもAとA#が共存したりしているが、一つの調性的な響きをつよく感じさせるし、ピアノの左手、低音部と合わせて、ポリトーナルというか、いくつかの調性の平面が立体的に組み合わさっているような効果をあげている。

特筆すべきはそのリズムであるが、実はこの部分、拍子記号を書き始めるとえらいことになる。16分の13(!)と16分の12が交代するのだが、作曲者は思い切りよく拍子記号を省略してしまった。16分音符を単位にとれば、複雑なはずの拍子なのだが、非常に自然に響く。この手の変拍子は古くはストラヴィンスキーあたりだが、はるかに自然にスムーズに処理されており、作者のリズムの感覚の鋭さを感じさせる。むしろ、プログレッシブロック変拍子に近いか・・・それも重過ぎる。この軽やかさはすばらしい。

ここでもピアノの左手は長三和音の四六の和音を頻用している。これが、全体にバスの安定感とともに聞き手に安心感を与えているように思う。

さて、この曲、Cのオクターブの強打で始まったが、最後もフォルティッシモのオクターブ(厳密にいえばサックスが5度音だが)で終わる。さて、作者の選んだ音は?

(追記)こちらのCDで聞けます。

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須川さんの超絶技巧を聞くだけでも価値があります。つまらない曲も入ってますが、オムニバスだからしょうがないですね。