Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

Mozart String Quintet No.5 KV593 Movt. 4

ハイメラン=アウリッヒ(中野吉郎・訳)クヮルテットのたのしみ(アカデミア・ミュージック)に付録2として訳者の中野さんの文章がついている。

ヨハン・トストという1755年生まれの音楽愛好家が、WAモーツァルトの弦楽五重奏に勝手な変更を加え、170年間バレなかったという話だ。

詳しくはもちろん上記の本に書いてあるのだが、うかつにもまったく知りませんでした。

だいたいBreitkopfの譜面が今でもトストの改作後のままになっているのだ。

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この部分はこの楽章のメインのモチーフなので、この後何度も出てくる。これは相当な改作であるし、むしろ改竄といったほうがいいだろう。オリジナルは、半音階の下降になっている。

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全然違う。

アマデウス弦楽四重奏団の演奏がYouTubeにあったが、改竄バージョンである。

www.youtube.com

因みに、新しい版での演奏はこちら。Sophia Szokolayという人の第一バイオリンで、トロント大学での演奏らしい。

www.youtube.com

こちらも新しい版というか、オリジナルによっている。James Buswell with Carpe Diem String Quartetというクレジットになっている。

https://www.youtube.com/watch?v=7tXKFycIpsI

 

 

 

Oración del músico (音楽家の祈り)

コロンビアのミュージシャン、DIEGO GALÉ氏のFacebookの書き込みにあった、Oración del músicoを、Google翻訳に手伝ってもらって英訳しました。


8行目のdiscipline以下のところがもうひとつよくわからないが、これは音楽家としては普遍的な祈りであろうと思います。


MUSIC PRAYER


Our father,
Teach me all to listen,
Protect me from false notes,
Easy money and success
At whatever price.
Give me patience to learn,
Wisdom to teach and
Discipline to accept what I have proposed.
May my work always be honored
And that I never lack the
Pleasure to play
Guide me in the path of responsibility.
Illuminates my path,
And that I never lack dedication and
Perseverance to convert
My dreams to reality.

 

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「ドクターX~外科医大門未知子」のテーマ オーケストラ編曲版

TVドラマ「ドクターX~外科医大門未知子」のテーマをオーケストラにアレンジしたものです。

なにしろ病院には縁が深いものですから、いつも興味深く拝見してます。権力争いと「御意」軍団はどこの会社でも見られることで、そういう意味では普遍的なドラマ。そこへ一匹狼のフリーランスの外科医がやってくる。西部劇を思わせるのですが、この沢田完さんのテーマもその辺を上手く表現して、まるで西部劇のテーマのようなかっこよさを漂わせています。

オリジナルは、印象的なメロディーと速度感のあるリフの組み合わせ、ただそれだけといっていいシンプルなものですが、さすがプロの仕事、ドラマの性格に沿ってかっこよさと緊迫感を見事に表現しています。オリジナルはCm-Eb-F-Abというコード進行をかたくなに守り通していますが、ここでは多少変化をつけてみました。でもオリジナルの方がよかったですね。

音はMusicTrackに上げてあります。

Jun Yamamoto:TVドラマ「ドクターX-外科医大門未知子」のテーマ - ミュージック : musictrack

ご参考までに、スコアはこちらです。

「3つのアラベスク~弦楽四重奏のための」初演 5月25日(木)19時開演 JFCアンデパンダン展 すみだトリフォニー小ホール

山本 準作曲「3つのアラベスク弦楽四重奏のための」が初演されます。

 

5月25日(木)19時開演 JFCアンデパンダン展 すみだトリフォニー小ホールです。

 

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山本 準 作品公開演奏 今後の予定

●「曽我部清典×直井紀和トランペット・トロンボーンデュオvol. 1」

2017年7月16日(日) be off 宇都宮市吉野1-7-10 tel. 028-601-2652 開演17:00

2017年7月22日(土) 久我山教会 杉並区久我山2-13-3 tel. 03-3332-9661 開演17:00

トランペットとトロンボーンの二重奏曲 "Fughetta and Scherzo" 初演予定

●2017年7月30日(日)
「こどもたちへのメッセージ in 熊本」
平成音楽大学熊本サテライトステージ 開演 14:00

ピアノ連弾曲「ふわふわのゆめ」初演予定

●2017年11月12日(日)
「越の風2017」
新潟市 だいしホール 開演 14:00

木管五重奏のための"Capriccio" 初演予定

 

バイエル修了程度で(おそらく)弾けるベルリオーズ「断頭台への行進」 Berlioz Symphony Fantastique Movt. 4 "Marshe au Supplice" 2 hands-piano

ベルリオーズの音楽は非常にストレートなので、代表作である幻想交響曲も、単純化さえすれば、ピアノでその骨格をなぞることはそれほど難しくはないのではないか、と思って第4楽章の「断頭台への行進」をピアノ編曲してみた。

 

あの疲れを知らないリストが、超絶技巧のピアノ編曲を遺しているが、到底弾けない。こちらはバイエル程度で演奏できる編曲を目指してみた。

ご興味のある向きはどうぞ。全曲のPDFはこちら

 

このように単純化してみるとベルリオーズの作曲上のアラも目立つ。38小節目の対斜(a と as)両声がesで同度になるところなど。しかし、それをカバーしてあまりある創造性の爆発といったものがこの曲にはありますね。

 

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Tchaikovsky Symphonic Fantasia "Francesca da Rimini"

Tフランチェスカ・ダ・リミニの第一部、大盛り上がりのところに出てくる木管主体のパッセージ。この手のテクスチュアを伴う木管の速いパッセージはワーグナーにもR・シュトラウスにも出てきますが、仕掛けはだいたい同じように思います。

チャイコフスキーの書き方は基本的に半音ずつ上行ないし下降する音形なのですが、それぞれのパートが自然にかつ表情を持つように工夫されています。音はこちら

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2小節目、F#m7 G aug Bb7と繋がっているのがちょっと変わっていて、Bb7の7度音がAbで、これが前のGと半音関係になっています。最後のD F7もF7の7度音EbがDと半音関係。

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Chopin Piano Sonata No.2 Movt. 4

ショパンの葬送行進曲を含む有名なソナタの第4楽章。両手のユニゾンで、速いし4ページしかないし、あっという間に終わってしまい、ソナタの終楽章としてはいかがなものか、と思わざるを得ない。

Wikipediaには「両手のユニゾンが最初から終末間際まで続き、調性も明確でない」とあるが、確かに最初の部分で減七の和音の連発で眼晦ましをしているものの、ショパンは何度も変ロ短調の明確なカデンツをおいており、曲全体が変ロ短調であることははっきりしている。

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4小節目から5小節目の矢印の部分がそうであるし、13小節目にも18小節目にもはっきりした変ロ短調の宣言がある。それ以外の部分はショパンの独創であろうが、あまり露骨に機能和声を感じさせることなく作ってある。青字で書いたような単純な三和音の半音平行移動なども音の高さを上手く配分することで流れを止めずに面白みを出すように工夫されている。17小節目の後半はE7と書いたが、ショパンがE7と感じていたかどうかはわからない。この6つの音符のうち、BとDとEはE7の構成音だが、肝心の導音であるG#がない。ただ、私の耳にはF#は9度音に、C#は13度音に聞こえるのでE7としてみた。

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二ページ目はさしもの臨時記号の嵐もおさまり、Dと言うような遠い和音も出てくるものの、Ab7(並行長調の属和音)からDbの四六の和音(並行長調の主和音)に到達してしばらく休憩である。そのあと、またF7→Bbmというカデンツが繰り返されて、元調を強調している。

ということで、見かけによらず「調性も明確でない」というのは言い過ぎではないかと思う。