Jun Yamamoto音楽を語る

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クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

【テルミン発明100周年 特別ワークショップ】 ~テルミン家三世代と竹内正実先生をお迎えして~国立音楽大学作曲専修主催

昨日はお付きで掲題ワークショップに行ってきました。国立音楽大学作曲専修さんは常に意欲的な企画をしておられてすごいですねぇ。講師はナターリア・テルミンテルミン博士ご息女)マリア・テルミン(同ご令孫)ピョートル・テルミン(同ご曾孫)竹内正実テルミン奏者)のお四人。

さて、竹内正実さんがテルミンの情報源として映画「テルミン」の紹介をしようとすると、テルミンの子孫のお3人はあの映画にはかなり反感をもっておられるようで、要は監督(スティーヴン・M・マーティン)がテルミン博士の意向も聞かずに勝手につくり、話題作りのためにテルミン博士の死に合わせて公開し、これも遺族の感情を逆なでしたし、クララ・ロックモアとの再会シーンも実際は感動的なものとは程遠く、親戚として出てくる登場人物も全く親戚ではないなどと、かなり厳しい批判に入り(あれをきちんと訳した通訳はえらい。絶賛)そのせいで時間が押して演奏が2曲ほど飛ばされる結果に。

テルミン一族の歓迎のために学生さんの曲が二曲演奏されたが、いずれも力作の力演であった。特に作曲者(学生)自らが演奏するテルミンは3か月の練習にしてはなかなかのものだったと思う。面白いのは竹内正実さんのコメントで、数少ないテルミンの曲が2曲増えたのはありがたいというのはいいとして、

「いずれも前衛やオールタナティブに逃げていないのがいい」

というのはいろいろ議論を呼びそうな発言である。

竹内さんはテルミンの演奏技術をきちんと勉強すべきだという立場からそのように強調されたのだと思うが、テルミンのような型破りな楽器については、記譜法から見直すべきだというジョン=ケージのような見方もありうるだろうし、「前衛」も結構だろう。

ただ、急いで付け加えるなら、テルミン演奏の音程も怪しく、「CとAmの繰り返しのようなもの」を延々とリバーブでごまかしながら「オールターナティブ」と称して垂れ流すのはやめてほしいと思うし、竹内さんの発言の真意もそこにあるだろう。前衛・オールタナティヴそのものが悪いのではなく、そこに向かう思想と姿勢の問題であろうと考える。

実際、ピョートル・テルミン氏の披露したループ作品にしても、一種のアヴァンギャルドであろうが、大変まじめに考えられたものだと思う。広島をテーマにしているというのだが、まぁ1.ソ連のシベリア抑留についてはどう落とし前をつけてくれるんだとか、2.民主主義というがプーチン主義は民主主義なのか、など、突っ込みどころは満載ではあるが…(あえて発言しませんでしたが)