Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

Stravinsky "The Rite of Spring" R.N. 91 Divided Violas

春の祭典」の練習番号91では、ヴィオラが6 Vle. solo と指定されている。妙なのはここだけ調号(H dur)が指定されていることだ。ヴィオラのソリ以外はチェロとコントラバスハーモニクスを伴うオスティナート(e fis cis h)でここは曲の他の部分同様調号なしである。

ここだけH durを感じて演奏せよということだろうか。しかし、スコアは全くストレートではない。ヴィオラ3つはト音記号で、残りはハ音記号で書かれているので、なんとなく3つずつに分かれているという感じだが、チェロ以下を適当にはしょって書いてみると:

 

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減8度(短2度、長7度)の嵐。それも一筋縄ではいかない和声になっている。

冒頭Aの和音、上がBm下がBで、dとdis が減8度。最初から喧嘩売ってるだろ。

この和音は聞き覚えがあるやつで、あの不気味な「星の王」に頻出したような気がする。

Bの和音もcとcisの減8度を含む。A7b9#9っぽいかなぁ。

CはAと同じと思いきや、最低音はhではなくhisになっており、dはオクターブだがhとhisでこれも減8度。c d fisが鳴るのでD7でhが倚音っぽい感じかな。

Dも聞き覚えのある和音で、cis上の減七和音にcを加えたような響き、転回すればC7b9かもしれないが、むしろこれは練習番号13の有名な和音 fes as ces fes g b des es=e gis h e g b des es の上4声を思わせる。

EはA7b9と解釈も(無理やり)できるかもしれないが、a とais (b)が増2度でぶつかっている。

Gはこの部分をしめくくる和音でG#mがAの上にのっている。

全部に言及できない(する必要もない)が、ストラヴィンスキーの調性に対する感覚のよく現れた経過句である。

バーンスタイン版の該当部分。(YouTube

 

https://youtu.be/rP42C-4zL3w?t=1260