Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい http://jun.la.coocan.jp

Prokofiev "Peter and the Wolf"

プロコフィエフの調性の自由自在な扱い方は作品群の随所に見られるが、非常によく知られた代表的な例として「ピーターと狼」の冒頭部分(ピーターの主題)を見てみたい。音はこちら

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最初の2小節は伸びやかなハ長調で何事も起きないかのように思われるのに、3小節目でいきなりAbに飛ぶ。このメロディーも曲者で、Eb Major として(移動ドで)ドードソドードソ、ドーソーソーではない。もちろんAb Major としてソーソレ、ソーソレ、ソーレーレーでもない。BbではなくBナチュラルが入ってくるので、あえて言えばドードソ#、ドードソ#、ドーソーソーである。和音記号であえて書くなら、AbMaj7 +9 ということになろうか。この音に説得力をもたせてしまうのがプロコフィエフの天才であろう。4小節目の最後の和音は、Ebが変化した偶成和音ということであろうか。同じEbへ繋がるが、変化をもたせている。

5-6小節目は変ホ長調の主和音であろう(Eb)ヴィオラが間にCを挟んだり細かい芸はしているものの、最初の2小節の繰り返しである。

平和は7小節目に破られる。Bmの和音がくる。Eb から Bmへ。Eb G Bb から B D F#へ。長三度(減4度)下がってしかも短三和音になるというショック。しかし音楽は何事もなかったかのように主調であるハ長調のドッペルドミナントたるD7を経てドミナントに至り、ハ長調の主和音に解決する。

この8小節はのびのびとした雰囲気でありながら、トンデモない大冒険に出かけて帰ってくるという意味で主人公ピーターにぴったりの主題となっているわけである。