David Fosterの音楽は常にリッチでキャッチーで、聴く人をそらさない魅力をもっている。この曲は最初オリヴィア・ニュートン=ジョンとのデュエットで発表され、"David Foster"という題名のアルバムに入っている。ここではアルバム"The Best of Me"のソロバージョンから採譜した。
この頃の彼の曲は、当時爆発的な進化を繰り広げていたシンセサイザーサウンドを全面に取り入れている。シンセベースの分厚い音の上に、緻密に音が積み上げられ、まるで壮大な建築物を見上げるかのようだ。
ブラスセクションもシンセサイザーをつかって、本物のブラスアンサンブルを使うよりもキレのある音になっている。発音時にちょっとグリスアップする音はトレードマークといっていい。Yamaha CS-80かと思っていたが、よくわからない。OberheimとかJupiter 8あたりかもしれない。いずれにせよ、当時のポリフォニックシンセサイザーなしには、実現し得なかった音である。
ここでは曲の骨組みがわかるように、単純化した楽譜を示す。歌のフレージングなどは細かいところで違っているかもし得ないがご容赦ください。音はこちら。
キーはあたたかみのあるGbである。歌の部分は掛留音(r)の嵐。七としたのは和音の7度音である。13小節目のバスのAb はIIm7のルートだが、すぐに動かず、一拍延ばされている。この延ばされたIIm7は実に効果的である。ここの進行は、冒頭から属和音ではじまり、
V-I-IV-IIm7-IIIm7-IV-V-VIm7-IIm7-V-I となっている。
20小節目のCm7b5-F7は一瞬だけVI度調への転調をしており、これまた実に効果的。
22小節目の3拍目の和音がちょっと変わっている。Abm7のあと、バスをAbにおいたまま、Fb(=E)を鳴らしている。VIIbの音であるが、転調というよりは、このVIIbの音をいれて、和音にちょっとした色付けをしていると考えたほうがいいかも知れない。機能的には
IIm7-VIIbmaj7-IIm7-V7-I
という進行になっている。この進行は気に入ったらしく、最後の部分では二回続けて出てくる。