この曲は、あれだけ仲が悪かったルービンシュテインが死んで、さぞよろこんだかとおもいきや、チャイコフスキーが彼に捧げたピアノ三重奏曲である。
二部構成で、第二部は変奏曲である。チャイコフスキーの変奏の妙に操られてついつい聞き逃してしまうが、第8変奏はFugaと銘打ってある。
しかし、主題がFuga向きでないし、掛留するつもりがないみたいだし、3声だが、二声部が三度ないし六度で並行して進行することが多いし、あまり対位法的とは言いがたい。
主唱ホ長調、応唱(Vc)ロ長調、主唱(Vln)ホ長調で、すぐ喜遊部に入り、続いて主唱が、(1)Vcでロ長調(この部分のVlnの自由声部はギクシャクしていていかにも無理無理あわせましたという感じだ)、(2)Vlnで嬰ハ短調(並行短調)、(3)ピアノで嬰へ短調(II度短調)で出てくる。下に青で囲ったところなどはVcとピアノで3度であわせましたという感じ出し、喜遊部にしても同じ音からのeinzatzが多くて面白みに欠ける。ここまでで、一度も掛留はない。
それでも聞かされてしまうのは、短いこともあるが、音楽の勢いであろうか。