ラヴェルのおそらくもっとも人口に膾炙している曲の一つ、なき王女のためのパヴァーヌでありますが、どうもピアノ版とオーケストラ版の違いが気になる。具体的にはハープのグリッサンドの扱いであります。
ピアノ版の最初のアルペジオは次のようになっています。
B C EG の組み合わせでCmaj7といっていいでしょう。次のバスがAになることをかんがえればAmaj9 と考えることもできます。この部分オーケストラではこうなります。
音使いは同じなのですが、ハープのFの弦を半音低くしてEとして使っています。本来のEとFbが同時になるという細かい芸ですね。ちなみに次の小節の頭は、ハープのBのハーモニクスです。
ピアノ版、次のアルペジオはここです。
同じくCmaj7の形ですが、オーケストラ版は少々異なります。
B C D F# となっていて、前のBmの和音を引きずっているようです。さらに、ピアノ版のアルペジオは次のようなところで出てきます。
Gからはじまる4小節とCから始まる4小節は完全にパラレルです。最初の方だけ見ますと、オーケストラではこうなります。
D F G Bb となっていて、同じくGm7ですね。二度目は5度下がります。
G Bb C Eb ですからCm7で、ピアノ版と音の構成は同じです。クラリネットの旋律が二度高く記譜されていますがこれはBbのクラリネットを使っているためです。
結局、ピアノ版とオーケストラ版で大きく違うのは2回目だけのようですね。