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Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい http://jun.la.coocan.jp

Ravel Piano Trio movt.1 (1)

ラヴェルが戦争に参加する前に遺言のつもりで一気に書き上げたというピアノ・トリオ。不朽の大傑作であるが、本人は戦争に志願していったはいいもののすぐ怪我だか病気をしてしまい、病院で寝ていたらしい。彼は戦争には向かなかろう。

冒頭、第一主題の提示がいきなり始まる。8分の8という変わった拍子で、3+2+3に分けられ、魅力的なテーマを奏でる。旋律線を聞く限り、A dorianの旋律(Aから始まり、F#を含む)ととれるが、一音一音に丁寧に和声付けがなされている。

1小節目3拍目の裏はソシレという和音でもいいはずだが、F#を拾ってBmの和音になっている。並行五度、並行和声はあたりまえのように使われているからここだけ並行五度を嫌ったわけでもあるまい。

2小節目の6拍目の裏はDの和音ではなくFの和音になっている。このナチュラルのFが実に魅力的にひびくが、7拍目(Bm)への倚音の扱いであろう。

3小節目はさらに凝った処理がなされている。ピアノ右手の中声はBb B C B という半音階になっており、下声はその完全4度下をF F# G F#と動いている。

実はこの手は、マイルス・デイビスの「デコイ」で多用されており、おそらくシンセサイザーを担当していたロバート・アービング3世の発明ではないかと思うが、非常に似ている。

というわけで、旋律自身は淡白な味わいでありながら、絶妙の和声付けによって新鮮な響きとなっている。ここで明らかなように、若干のtwistはあっても基本的にこの楽章は旋法的に書かれており、三和音を基礎においていることがわかる。