Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

Bartok String Quartet No.3 Movt. 2

バルトークがベートーベン的完成を達成したといってよい第3番の弦楽四重奏曲であるが(異論はおありと思いますが)、いつもこの第2楽章の終り部分にくると、ここでこのモティーフ(g, g, fis, g)をもう少し積み重ねてフィニッシュしたい、というセンセーションに駆られるのは私だけですか?そうですか。

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Bartok String Quartet No.1 Movt. 1

バルトーク弦楽四重奏第1番を聞いていると、ドビュッシーラヴェルのフランス音楽と直接つながっているような印象を受けるところがある。例えば45小節目からの次の部分。音はこちら

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45-46小節目はほとんどモーダルであり、さらに一つ一つの和音も極めてオーセンティックな長三和音であったり短三和音であったりして、耳に厳しいところがひとつもない。47小節目はそれまでGbであったものがGナチュラルになって、旋法が変わったことをしめすが、とてもドビュッシーっぽいと思う。48小節目の2拍目、3拍目も短三和音の平行移動が出てくる。これはポピュラーミュージックでもよく出てきますね。ただ、仔細に音を見ていくと48小節目3拍目の2つ目の16分音符のe fis a がちょっと気になる。第二バイオリンもそれほどいい旋律というわけではないので、ここはfisではなく、すぐ下のe か cの方がよかったのではないかと思う。(バルトークにだめだししてどうする)

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49小節目もa と ais が共存してはいるが、モーダルであり耳に厳しいところはほぼない。50小節目は臨時記号が消えてしまい、プレーンなD エオリアン。最後の2拍はこれがあやしくなって、51小節目のbとcisの増二度を伴う奇妙な旋律に落ち着く。

Silent Night (re-harmonized)

もう師走である。もうすぐ冥途の旅の一里塚である。あーやだやだ。

その前にクリスマスがあるのが(異教のまつりではあるが)救いである。

大昔に作ったニフティサーブのクリスマス企画用のネタをサルベイジしてきた。楽譜をきちんと書いたのは今回初めてなのでご海容の程を…

きよしこのよる」のリハモです。音はこちら。(エレピで弾いています)

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Bruckner Symphony No.3 Movt. 1

「不機嫌な姫とブルックナー団」を読んだので、ブルックナー re-visited である。

大御所ワグナーにはウケがよかったのに初演がぼろぼろだったという第3番。確かにところどころワグナーを思わせるところもあるし、後のマーラーを予感させるところもあってなかなか面白い曲だ。

異なる版の問題だが、ここでは評判の悪いシャルクの第二版(レティヒ、1890)を使っている。単に最初に聞いたのがこの版だというだけで、特に深い意味はない。

練習番号Aで出てくる印象的なオクターブユニゾンの主題であるが、繰り返しの二度目は和声付けがなされているのでそれを見てみる。音はこちら。オルガンの音にしてみた。

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独創的だと思う。7小節の間にトリッキーな転調が含まれていて、3小節目もAではなくAbをかすめてくるのでC majorではなく、C minor なのでしょうね。青い四角で囲んだ、C から Db への6度の和音の半音常上昇がなんとなくワーグナーっぽい(?)。6度の長三和音の並行はどの音程でも禁則が起きないのでなんとでもなるのだが、ここでは非常に印象的な効果をあげている。Db から A7への移行はI - VIの移動でやや無理ながらすぐに元調に復帰する。

この主題は展開部の前にもう一度登場する。練習番号Cの部分。

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今回はIV度調で登場するのだが、二小節目の頭が一筋縄ではいかない和音である。C上の減七和音がBbの上に乗った形になっていて、おそらくF7b9の根音省略が、基音であるBbの上に乗っているという形だろう。これは属和音となって、Bbmに解決するが、そのあと奇妙な進行(Ebm7 Eb7 Ab)となるが、3小節目はFbも出てくるし、Ab minor と解釈してみた。AbからAへの同じ半音上昇のあと、これも前回同様長3度下のF7にはいるが、次のFdim7はBb7b9の根音省略と解釈することもできるかもしれない(?)その後Bbm7になるのだが、その後ホルンがF単音でこれを受けるのだが、この辺はブルックナー流の変態和声である。

この主題は再現部にもう一回現れる。

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ここでは最初の出現とほぼ同じ形だが、冒頭からして少々変わった形になっている。2小節目の頭はA7b9(属和音)の根音省略と見ていいだろうか。

ブルックナーも結構、和声的な芸を含んでいて面白い。

 

 

 

Ravel Le Tombeau de Couperin "III. Forlane" (2) (修正版)

RavelのForlaneの続きです。9小節目からで、わかりやすくゆ~っくり弾いたものがこちら

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9小節目からは、まずEmの和音でスタートするものの、いきなり低音でC#のバスを鳴らします。これは将来的には18小節目にG#メジャーに解決しますが(下の譜例)、これはD#m7b5を間に挟み半終止を意図していると思われます。10小節目からはF# minor、のちC# minor と解釈するのが妥当と考えられます。(K先生ご指摘ありがとうございます)

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その後は、骨格としてはG#m-G7-C-G7-CmというパターンをG#からとF#からと二回繰り返し、もとのEmにもどるという形になっています。G#m からG7というのも半音階的に動いて美しいですが、間違いなく掟やぶりですね。

ここの19小節目後半の音使いはまさにモダンジャズで使うフォームになっています。左手で7度3度を、右手で3度13度を取っていますが、3度を何度も重ねて近代的な響きになっています。ジャズで使うときは、左手にGの代わりにAを持ってきて9度も加えることが多いです。むしろ根音のGはベースに任せてしまうわけですね。

Canon at 4th

来年用の曲があったり、テルミンライブがあったりして間が空きましたが、しばらくぶりにカノンを書いてみました。完全4度のカノンです。アルトが(ちょっと低いですが)Gから始まり、ソプラノがCで追いかけます。バスは自由声部です。音はこちら

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短いものなので、ちょっとクロスワードパズルをやるような感じです。あと、同度、6度、8度を作ると一応ワンセットかな。箱庭みたいな曲集になります。

Ravel Le Tombeau de Couperin "III. Forlane"

ラヴェルの「クープランの墓」は毎度言っているが、ラヴェルがこの曲のために丸々一つの和声体系を編み出しちゃったといった趣がある。

特にForlaneについては、以前最初の4小節だけ紹介したつもりになっていたが、まぼろしだったみたいだ。(でも楽譜のファイルは残っていた)

下に掲げるのは原曲の4小節と、その和声の骨格を数字で表したもの、それに下の段はそこから装飾を取り払った上で、古典的な和声に引きなおしたらどうなるかというのを示している。

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この4小節が、E minor で、I-IV-II-V-Iという基本的な和声進行になっていることは、聞いてみればなんとなくわかる。原曲の指定は付点四分音符MM96だが、わかりやすいようにゆ~っくり弾いたものがこちら。4小節目はVの和音(属和音)と考えられるが、導音を半音あげることをせず、Dナチュラルのままになっているのが、E minorではなくEのエオリアンを感じさせる。

この部分の和声をじっくりみてみると、長三和音の5度音を半音上げた増三和音(aug)が多用されていることがわかる。順番にコードネームを振ってみると、

1小節目

Em +7

E aug +7

2小節目

E aug +7 on A

A aug +9 ⇒ 9

3小節目

F#m +7 9  11

F# dim 9

4小節目

G dim on B (Em の四六の和音の変形)

Bm7 -9

5小節目

Em 

となる。

下に示したのは少々解釈が違うが、以前やった分析である。一番下の段の和声の進行の表現が見やすいのであげてみる。

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おそらくこの曲は、古典的な3度重ねの和声を7度音に留まらず、9度、11度あるいは13度まで拡張して、それぞれ半音の変異を加えることで成り立っているととらえることができると思う。すでにリディアン・クロマティックによる詳細な分析などもあると思うが、これは自分でやってみないとなかなかわからない。

最後に上の楽譜の下の段、「目黒のさんま」ではないが、小骨をとり、蒸し揚げて油気を抜いた、4小節の骨格の音はこちら。まったく、魅力のない響きになってしまうが、音楽の骨格は理解できると思う。