Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

「3つのアラベスク~弦楽四重奏のための」初演 5月25日(木)19時開演 JFCアンデパンダン展 すみだトリフォニー小ホール

山本 準作曲「3つのアラベスク弦楽四重奏のための」が初演されます。

 

5月25日(木)19時開演 JFCアンデパンダン展 すみだトリフォニー小ホールです。

 

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山本 準 作品公開演奏 今後の予定

●「曽我部清典×直井紀和トランペット・トロンボーンデュオvol. 1」

2017年7月16日(日) be off 宇都宮市吉野1-7-10 tel. 028-601-2652 開演17:00

2017年7月22日(土) 久我山教会 杉並区久我山2-13-3 tel. 03-3332-9661 開演17:00

トランペットとトロンボーンの二重奏曲 "Fughetta and Scherzo" 初演予定

●2017年7月30日(日)
「こどもたちへのメッセージ in 熊本」
平成音楽大学熊本サテライトステージ 開演 14:00

ピアノ連弾曲「ふわふわのゆめ」初演予定

●2017年11月12日(日)
「越の風2017」
新潟市 だいしホール 開演 14:00

木管五重奏のための"Capriccio" 初演予定

 

バイエル修了程度で(おそらく)弾けるベルリオーズ「断頭台への行進」 Berlioz Symphony Fantastique Movt. 4 "Marshe au Supplice" 2 hands-piano

ベルリオーズの音楽は非常にストレートなので、代表作である幻想交響曲も、単純化さえすれば、ピアノでその骨格をなぞることはそれほど難しくはないのではないか、と思って第4楽章の「断頭台への行進」をピアノ編曲してみた。

 

あの疲れを知らないリストが、超絶技巧のピアノ編曲を遺しているが、到底弾けない。こちらはバイエル程度で演奏できる編曲を目指してみた。

ご興味のある向きはどうぞ。全曲のPDFはこちら

 

このように単純化してみるとベルリオーズの作曲上のアラも目立つ。38小節目の対斜(a と as)両声がesで同度になるところなど。しかし、それをカバーしてあまりある創造性の爆発といったものがこの曲にはありますね。

 

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Tchaikovsky Symphonic Fantasia "Francesca da Rimini"

Tフランチェスカ・ダ・リミニの第一部、大盛り上がりのところに出てくる木管主体のパッセージ。この手のテクスチュアを伴う木管の速いパッセージはワーグナーにもR・シュトラウスにも出てきますが、仕掛けはだいたい同じように思います。

チャイコフスキーの書き方は基本的に半音ずつ上行ないし下降する音形なのですが、それぞれのパートが自然にかつ表情を持つように工夫されています。音はこちら

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2小節目、F#m7 G aug Bb7と繋がっているのがちょっと変わっていて、Bb7の7度音がAbで、これが前のGと半音関係になっています。最後のD F7もF7の7度音EbがDと半音関係。

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Chopin Piano Sonata No.2 Movt. 4

ショパンの葬送行進曲を含む有名なソナタの第4楽章。両手のユニゾンで、速いし4ページしかないし、あっという間に終わってしまい、ソナタの終楽章としてはいかがなものか、と思わざるを得ない。

Wikipediaには「両手のユニゾンが最初から終末間際まで続き、調性も明確でない」とあるが、確かに最初の部分で減七の和音の連発で眼晦ましをしているものの、ショパンは何度も変ロ短調の明確なカデンツをおいており、曲全体が変ロ短調であることははっきりしている。

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4小節目から5小節目の矢印の部分がそうであるし、13小節目にも18小節目にもはっきりした変ロ短調の宣言がある。それ以外の部分はショパンの独創であろうが、あまり露骨に機能和声を感じさせることなく作ってある。青字で書いたような単純な三和音の半音平行移動なども音の高さを上手く配分することで流れを止めずに面白みを出すように工夫されている。17小節目の後半はE7と書いたが、ショパンがE7と感じていたかどうかはわからない。この6つの音符のうち、BとDとEはE7の構成音だが、肝心の導音であるG#がない。ただ、私の耳にはF#は9度音に、C#は13度音に聞こえるのでE7としてみた。

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二ページ目はさしもの臨時記号の嵐もおさまり、Dと言うような遠い和音も出てくるものの、Ab7(並行長調の属和音)からDbの四六の和音(並行長調の主和音)に到達してしばらく休憩である。そのあと、またF7→Bbmというカデンツが繰り返されて、元調を強調している。

ということで、見かけによらず「調性も明確でない」というのは言い過ぎではないかと思う。

 

 

Sibelius Symphony No.3 Movt. 3

シベリウスの第3交響曲の第3楽章。練習番号8の手前のところ。ほぼ全員で8分音符3つのモチーフを繰り返しながら上がっていくところなのだが、ちょっと変わった響きを持っている。

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上の譜例(音はこちら)の10小節目だが、Gb になっている。ここの和音はCの保続音の上にBb Db Fb(E) が鳴っており、あとG が鳴ればめでたくG上の減七和音となり、おそらくは譜例の12小節目の明らかなAb Majorへのドミナント、すなわちEb7b9の根音抜きと考えられるのだが、シベリウスはGbに固執するのである。

 

となるとこれは、Ab Bb C Db Eb Fb Gb という音階になる。・・・あまりオーセンティックではない。シベリウスの発明なんでしょうね。

因みに、このGbをGに変えてやると下記のようになり、響きは伝統的になるが、これはシベリウスの避けたかったところなのでしょう。(音はこちら

 

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Hindemith Kammermusik Nr. 1 Movt.1

ヒンデミットのKammermusik 第1番。

第一楽章からして相当ユニークかつ攻撃的な音楽で、木琴(Xylophone)が大活躍するのだが、ピアノも結構すごいことが書いてある。これをやらないとあの響きにならないのですね。左手でEb minor 右手で D Majorを手を交差させて互い違いに弾くということになっている。

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また、終楽章の打楽器に sandbüchseという指定があるのだが、Wikipediaでは「砂の入ったブリキ缶」とあるが、アバド=ベルリンの演奏を聴いてみると、確かにマラカスのような音が入っている。マラカスじゃいけなかったのか。手に入らなかったので代用したのか。

Bartok String Quartet No.5 Movt. 1 (2)

バルトーク弦楽四重奏曲第5番の第一楽章の180小節目から8小節。

 

これは既に何度も出てきているモチーフだが、改めて全楽器の斉奏で示され(A Cb B C D Eb) このあと15回、「入り」がある。

 

1 A から 上行

2 D# から 上行 

3 Eb(D#) から 下行

4  A から 下行

5 A から上行

6 D# から 上行

7 Eb(D#) から下行

8 A から 下行

9 E から 上行

10 D# から上行

11 Eb(D#) から 下行

12 A から 下行

13 B から 上行

14 A# から 上行

15 A から 下行

 

このように見ると、構造は比較的簡単で、1-4 と5-8は繰り返しに過ぎず、 9-12 も 9がEからで例外だが、あとは同じ、13,14 は変化するが、15からは改めてAにもどって別の部分が始まると見てもいいかもしれない。

AとD#(Eb)はお約束の増4度(減5度)関係であり、アイデアはいたってシンプルである。

一方縦方向(和音)という意味では半音がぶつかるなどしてかなり激しいが、ところどころでこれもお約束の和音が出てくる。

青い枠で囲んであるところ、Aは増4度+完全4度の組み合わせ、Bは逆で完全4度+増4度の組み合わせである。Cは下から増4度+完全4度+増4度の組み合わせになっている。

Dは珍しく一瞬だがAの長三和音が鳴る。EはF7b5である。FはDaddE であり、GはCm add b2、Hは Dm7b5 IはB7 そのものである。

緑で囲んだところは内声が厳しい交換をするところ例えば第二バイオリンのC Bb に対して、ヴィオラがB C# と絡むところである。

不思議なのは186小節目のヴィオラで、Hの部分は音はEとしてもよかったのではないかと思うが、わざと一度Dに下がって4拍目の頭をD#としている。C E F Ab という和音を嫌ったのかな。

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