Jun Yamamoto音楽を語る

Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい https://jun-yamamoto.wixsite.com/jun-yamamoto

「Jun Yamamoto音楽を語るークラシックつまみぐい」これまでの記事リスト

はてなブログって、今までの記事の一覧というのが見にくいですね。

面倒なのでこの辺で一度、リストを作りました。もう自分でも何を取り上げたかわからなくなっているので、次に書くときに「これは書いてないよな」という確認用に使おうと思っています。ご参考まで。しかし142エントリーもよくまぁ書いたものだと我ながら思う。

 

1 Wagner ジークフリートの葬送行進曲
2 Bach Well-Tempered Klavier I #22 Fuga in Bb minor
3 コードネームによるバッハのシンフォニア第9番のアナリシス
4 Poulencのクラリネットとピアノのソナタの第二楽章 Romanza
5 Haydn Symphony No. 43 mov. 2 vs. Mozart Symphony No.40 mov. 2
6 Bergの抒情組曲
7 Bach French Suite No. 5 G dur のAllemande BWV816
8 Mozart Piano Sonata a moll K310 2nd movt.
9 チャイコフスキーのどんどん下がるバスライン
10 ドボルザークの上がっていくバスライン
11 The Beginning of the 3rd Symphony by J. Brahms
12 Grieg Piano Concerto a moll op. 16 movt. 1, Animato
13 Mahler Symphony No.5 Finale からほんの一部分を
14 Mozart String Quartet No.19 K465 "Disonance" Introduction Analysis
15 Faure String Quartet op.121 1st movt. Beginning part
16 Ravel Piano Trio movt.1 (1)
17 Brahms Variation on theme by paganini Book1 Var. 13
18 Prokofiev Visions fugitives No.2
19 Ravel Piano Trio Movt.1 (2)
20 Beethoven Symphony No. 3 movt.1 the beginning
21 Ravel Sonatine movt. 2
22 Beethoven Symphony No.3 movt.2 Fugue
23 Beethoven Piano Sonata No. 17 movt.3
24 Tchaikovsky Piano Concerto No.1 b moll movt.1 First Cadenza
25 Ravel Jeux d'Eau
26 Tchaikovsky Symphony No.6 "Pathetique" Movt. 1
27 Mozart Symphony No. 40 G minor Movt. 3
28 Dvorak Symphony No.8 Movt.4
29 Bellini Overture "I Capuleti e i Montecchi"
30 Ravel String Quartet Movt. 4
31 Beethoven Piano Sonata No. 29 Movt. 3
32 Mahler Symphony No.1 Movt. 4
33 Ravel String Quartet Movt. 4 (2)
34 Bizet "Farandole" L'Arlésienne Suite No.1
35 Ravel Menuet Antique
36 Ravel Menuet Antique (2)
37 Puccini "Nessun Dorma" from opera "Turandot"
38 Bach Klavier Partita No.6 Gigue
39 Mozart Symphony No. 40 Movt. 4
40 Debussy Arabesque No. 1
41 Ravel Pavane pour unu Infante Défunte
42 Tchaikovsky Piano Trio Var. 8 Fuga
43 Schubert String Quartet No. 15 Movt.2
44 Rimsky-Korsakov Suite "Scheherazade" Movt. 1
45 【閑話休題】4和音は10種類。(ごめん、まだあった)12種くらい。
46 Haydn Symphony No. 104 Movt. 4
47 Beethoven String Quartet No. 5 Movt.2
48 Dvorak Piano Quintet No. 2 Movt.1
49 Ravel String Quartet Movt.4 (3)
50 Beethoven Symphony No. 5 Movt. 4
51 Beethoven Piano Sonata No.8 "Pathetique" Movt.1
52 Major and Minor
53 Bach Well-Tempered Klavier I No.4 C# minor Fuga
54 Bach Well-Tempered Klavier I No.4 C# minor Fuga (2)
55 【番外編】バナナ村に雨がふる(乾 裕樹・曲)
56 Bach Well-Tempered Klavier I No.4 C# minor Fuga (4)
57 Bach Well-Tempered Klavier I No.4 C# minor Fuga (5)
58 Bach Well-Tempered Klavier I No.4 C# minor Fuga (6)
59 Bach Well-Tempered Klavier I No.4 C# minor Fuga (7)
60 Bach Well-Tempered Klavier I No.4 C# minor Fuga (8)
61 Could LvB's Piano Concerto's first theme be MAJOR with a different accompaniment?
62 National Anthem of Japan "Kimi-ga-Yo"
63 The National Anthem of Japan arranged
64 Mandelbrot Quartet (1996)
65 Chopin Etude No. 3 op.10-3
66 Shostakovich Symphony No. 5 Movt. 4
67 小田和正 「君住む街へ」
68 Rachmaninoff Piano Concerto No. 2 Movt.1
69 Shostakovich Symphony No. 5 Movt. 4 (2)
70 Prokofiev Symphony No.7 Movt.1
71 Schőnberg String Quartet No.1 op. 7
72 Schőnberg String Quartet No. 1 (2)
73 Grieg Piano Concerto a moll movt.3
74 Debussey La plus que Lente
75 Richard Strauss "Also sprach Zarathustra"
76 Chopin Etude op.10 No.7
77 Schumann Symphony No.4 d moll
78 Brahms Clarinet Quintet Movt. 1
79 Mendelssohn Symphony No.2 "Lobgesang"
80 Bach Invention No. 6 E Major 2 voices
81 Ravel String Quartet Movt.4 (5)
82 1974年の自作コラール
83 Teruyuki Noda Berseuse for piano solo
84 Water Melon County vs. Poulenc Sonata for Piano with 4 hands Movt. 2
85 Richard Wagner "Tannhaeuser" Rebuttal to R. Taggart Murphy
86 Dvorak Symphony No. 8 Movt. 4th 尻切れトンボのトランペット
87 Karen Tanaka "Crystalline II"
88 三善晃 「夏の散乱」 ~現よ 明るい私の墓よ(宗左近)~ Akira Miyoshi /DISPERSION DE L'ETE 
89 Patrick Gowers the "Opening Theme of the Adventures of Sherlock Holmes"
90 Cherokee Lullaby
91 オーケストラのスコアというのも人智の結晶
92 Beethoven Violin Sonata No.3 Movt. 3 ベートーベンはなぜここまで野暮ったいのか
93 【蔵出し】 クラリネットとピアノのための「海へ」 "À la mer" pour clarinette et piano
94 蔵出し 「春」-バイオリンとピアノのための
95 Prokofiev Symphony No.6 Movt. 1 & 2
96 Prokofiev Flute Sonata Movt. 3
97 Note étrangère (非和声音)
98 Herbie Hancock Solo in The Eye of the Hurricane (1965)
99 Wagner "Ride of the Valkyries"
100 Kaori Nabeshima "Exotic Dance" for Alto Saxophone and Piano
101 Schönberg Kammersymphonie Nr. 1 E-Dur op. 9
102 【番外編】クラシック音楽における即興演奏
103 Richard Strauss "Metamorphosen"
104 自作の生まれて初めての公開演奏にあたりびびりまくっている件
105 Hiroko Taniyama "Asobi-ni-Ikouyo"
106 Toru Takemitsu Viola Concerto-A String Around Autumn
107 Beethoven String Quartet No. 10 Movt.3
108 Diana Krall "California Dreamin'" from "Wallflower"
109 Hikaru Utada "Ore no Kanojo"
110 Mariya Takeuchi "Shuugakushou" 竹内まりや ”終楽章”
111 Berg "Violin Concert" "Lyric Suite"
112 Brahms Symphony No.1 Movt. 4
113 Tchaikovsky Symphony No.6 (2) Movt.3
114 Brahms Symphony No.1 Movt. 1
115 Mariya Takeuchi "Konya wa Hearty Party"  竹内まりや「今夜はHearty Party」
116 Mariya Takeuchi "Genki Wo Dashite" 竹内まりや 「元気を出して」
117 "serious" music?
118 Sibelius String Quartet op. 56 "Voice Intimae" Movt. 2
119 Hall & Oates "Kiss on my list"
120 David Foster "The Best Of Me"
121 Saint-Saens "La Cynge" from "Le carnaval des animaux"
122 "Love Is Over" by Kaoru Ito arranged by Akihisa Matsuura
123 Mozart Piano Concerto No. 24 c moll KV.491 Movt. 1
124 Tchaikovsky Piano Concerto No.2 Movt. I
125 Grieg Piano Concerto Movt. I (2)
126 Brahms Piano Concerto No. 1 D moll Movt. 1
127 Rachmaninoff Rhapsody On A Theme Of Paganini, Op.43 - Variation 11
128 Liszt Etudes D'Exécution Transcendante, S 139 - 4. Mazeppa
129 ショーターとハンコックから、次世代のアーティストへの公開レター(非公式勝手訳)
130 演奏家に必要なものの優先順位(Hierarchy of Needs for Musiciansの邦訳)
131 Ringo Shiina "Otona no Okite" Theme for the TV series "Quartet"
132 椎名林檎「おとなの掟」TVドラマ「カルテット」主題曲
133 Schubert Piano Sonata No. 20 D 959 post.
134 Mozart Piano Concerto No.23 K 488 Movt. 2
135 Haydn String Quartet No.64-5 "Lark" Movt. 4 Finale
136 Haydn String Quartet No. 64-5 "Lark" Movt. 1 (2)
137 Dvorak String Quartet No. 13 Op. 106 Movt.3
138 Prokofiev Violin Concerto No.1 Movt.3
139 Jazz A Capella Group "Accent"-Vocal Group History and Styles
140 Satie Gnossiennes No.5
141 20世紀音楽の始まり
142 Jun Yamamoto "3 Arabesques for String Quartet" (1)

Bartok String Quartet No. 5 Movt. 1

バルトークの6曲の弦楽四重奏曲はどれをとってもすばらしいと思うが、特に5番が好きだ。

第一楽章の14小節目からの一節だが、いかにも対位法でございという顔をしているのだが、よく見てみるとよく言えば融通無碍、悪く言えば結構ご都合のなんちゃって対位法であることがわかる。そこがバルトークのテクニックなのだが。音はこちら

14小節目、チェロのF#の上に順番に動機の入りが積み重ねられており、非常に混みあった形で7回までは数えることができる。しかし、最初の形が保たれるのは5回目までで、6回目の第二バイオリンは5度の跳躍をあきらめているし、6番目は反行形なのだが一回だけというのはいかにも形がよくない。この後は、この動機は全体を保った形では出てこない。

17小節目からはチェロと第一バイオリンの高い音を短9度関係(半音違い)において緊張感を保たせながら(赤の音)、内声では同じフレーズをずらして使っている。これも反行形といえないこともないが…(紫)

それも18小節目の終わりからオクターブになってしまい(オレンジ)、21小節目ではユニゾンになってしまうので、この部分は実質的には3声で書かれていることになる。

21小節目の後半からは上3声とバスが半拍ずれて方や上行、バスは反行して下降していくが、実質的に青の部分はBb major (あるいはg minor)で水色の部分は d minorである。調性のはっきりした部分と調の特定できない部分を両方使いわけるのもバルトークの特徴といっていいと思う。

 

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Jun Yamamoto "3 Arabesques for String Quartet" (1)

5月に初演する拙作、「弦楽四重奏のためのアラベスク」。こちらが、プログラム・ノートになっております。まず第一楽章ですが、
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第一楽章 Correntemente
波打ちながら連続する16分音符6つを単位とする流れを中心として、これに附点8分音符および8分音符を単位とするリズムが交錯する。コーダは速度を落とし、Tranquillo となって第二楽章への導入となる。
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なんのことやらわからないのがプログラム・ノートというものではないでしょうか(違

「波打ちながら連続する16分音符6つを単位とする流れ」といってもわかりにくいですよね。楽譜で見ていただいたほうが早いと思いますが、譜例の21小節目からのAと示したのがそれです。青い線で示した部分ですが、音は順にa h cis c h b となっていまして、これがしつこく繰り返されるモチーフであります。a h cis と全音全音で上がっていって下がるときにc h b 半音・半音・全音と降りてくるという音形がテーマです。

ノートで「附点8分音符を単位とするリズム」というのがBでありまして要するに16分音符を3+3としたもの、「8分音符を単位とするリズム」というのがCで、2+2+2としたものです。散々やりつくされたリズムですが、それで新味が出せるか、というところが見所ですねぇ。

これらが交錯して音楽を形作っていくわけですが、なるべくよい響きを求めてということで、どの瞬間にも思ったような和音になるようにするのに大変苦労しております。(そうは聞こえないかもしれませんが)この楽章だけでおそらく一年くらいはかかっていますが、演奏すると3分弱です。


初演は5月25日(木)19:00開演、すみだトリフォニーホール小ホールです。

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20世紀音楽の始まり

ドイツロマン派の終わりはどこなのか。ワーグナーパルジファルが1882年、ブラームスの最後の交響曲が1885年である。ワーグナーは1883年に死に、ブラームスは頑張ったが、1897年に死んでいる。シェーンベルクが「浄夜」を書くのが1899年、まさに20世紀の前夜である。


ロシアではチャイコフスキーが悲愴交響曲を書くのが1893年。その年に死ぬ。


しかし、ロシアではムソルグスキーが1874年に「展覧会の絵」を書き(この年は「ニーベルングの指環」が完成した年)、フランスではドビュッシーが愛らしい初期の作品であるピアノトリオを1882年に書き、「月の光」「亜麻色の髪の乙女」あたりは1882年に出来ている。ラヴェルも1885年、「古風なメヌエット」を書いている。


ドビュッシーは1889年に「小組曲」を完成させ、革命は1894年に「牧神の午後への前奏曲」でとりあえず完成している。


ドイツではシェーンベルクの室内交響曲が1906年、ベルクのピアノソナタ作品1が1908年、十二音技法の最初の作品であるシェーンベルクのピアノ組曲はずっとおくれて1923年である。


ロシアからパリに出てきたストラヴィンスキーは1910年に「火の鳥」、1911年に「ペトルーシュカ」と快進撃を続け、ついに1913年に「春の祭典」を発表して、すべてをぶっ壊してしまった。このストラヴィンスキーの「蛮行」はドビュッシーの破壊工作が前提になっているといっていい。


つまり、ドイツ音楽が自重でつぶれて、十二音技法ができるはるか以前にフランス=ロシア連合が新しい音楽の扉を開いてしまったと言えるだろう。

追記)

マーラーとRシュトラウスを加えてみた。この二人は遅れてきた感が強い。もちろん作品の価値には関係ないことだが。

 

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Satie Gnossiennes No.5

www.youtube.com

要するに一聴、さまようのである。しかし、よく見てみると必ずしも形式がないわけではない。コード進行は、

 

[1]  G   C  Am  Em  G  D  Bm  Em D Bm

[2] E7(13) * F#m/A  E7 F#m/A  E7 * G D G Bm Em A7 *Bm/D  

[2'] E7 * F#m/A E7 *F#m/A E7  G  D  

 

[1']  G  C  Am Em  G  D  Bm  Em

[3] C  *F  G7  *Am/C  D7(13)  G  D7  G  D7 *F  C  

 

[1]  G  C Am Em G D Bm Em D Bm

[2] E7(13)  *F#m/A  E7  *F#m/A E7 *G D G  Bm Em A7 *Bm/D

[2'] E7(13)  *F#m/A  E7  *F#m/A  E7  *G D

 

[1'']  G  C  Am Em  G D Bm  Em

 

Gから始まる[1]の部分が4回繰り返されており、緩やかなロンドのような感じである。そもそもこの[1]のテーマが一つも属和音主和音というような古典的な進行を含まず、メロディーも順次的にかつ装飾的で彷徨う性格をもっている。

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特徴的なのは、赤字で示した進行だが、属七に、解決しない6度音(13thということもできる)を付加した和音が、バスは「正しく」完全4度上行するのだが、実はバスは次の和音の3度音で第一転回形になっているというパターンである。e.g. E7(13)  F#m/A

これが彷徨い感を醸成する。

青字で示したのは、属七が短三度上がって転調するパターンである。e.g. E7 G

*をつけたのが、古典的な和声ではない進行で耳が彷徨うところである。

 

 

 

 

Jazz A Capella Group "Accent"-Vocal Group History and Styles

アカペラグループのスタイルの解説つきのショーケース。大変参考になります。

www.youtube.com

"Accent"のページはこちら。

www.patreon.com

一つずつ、勉強させてもらおう。

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これは割合ストレートですね。C7の次にF#7が来るのは所謂裏コード(増4度上)ですし、あとはほぼ機能和声にしたがってます。 最後の小節のA7 から Eb7b5に行くのもクラシックではおなじみの進行だし。時々7度音が下降しなかったりはしますが…

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これは一筋縄ではいかないアレンジ。特にセカンドパートの半音の動きは凝りまくっていて、これを歌うのは大変だろうな。それと、転回形を自在に使って、各ラインがスムーズに流れるようにしているのがポイントかと。

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こちらは大変シンプル。シンコペーションが多少あるだけで、コード進行は素直である。

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これも和声付けそのものはシンプル。単純な3和音に2度、4度をサスペンドしてみたり、2度を加えたりしている。アルペジオ風の入り方が特徴的。

 

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Take6は最後の3小節はひねってある。内声4つが、基本的に真ん中の2音を半音でぶつける形で降りてくるというアイデアを(おそらく)コアにして他の音を配置していると思う。内声に9th 13th があっても平気でトップにroot を持ってくるあたりはすごくアンチクラシック。