Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい http://jun.la.coocan.jp

Bartok String Quartet No. 5 Movt. 1

バルトークの6曲の弦楽四重奏曲はどれをとってもすばらしいと思うが、特に5番が好きだ。

第一楽章の14小節目からの一節だが、いかにも対位法でございという顔をしているのだが、よく見てみるとよく言えば融通無碍、悪く言えば結構ご都合のなんちゃって対位法であることがわかる。そこがバルトークのテクニックなのだが。音はこちら

14小節目、チェロのF#の上に順番に動機の入りが積み重ねられており、非常に混みあった形で7回までは数えることができる。しかし、最初の形が保たれるのは5回目までで、6回目の第二バイオリンは5度の跳躍をあきらめているし、6番目は反行形なのだが一回だけというのはいかにも形がよくない。この後は、この動機は全体を保った形では出てこない。

17小節目からはチェロと第一バイオリンの高い音を短9度関係(半音違い)において緊張感を保たせながら(赤の音)、内声では同じフレーズをずらして使っている。これも反行形といえないこともないが…(紫)

それも18小節目の終わりからオクターブになってしまい(オレンジ)、21小節目ではユニゾンになってしまうので、この部分は実質的には3声で書かれていることになる。

21小節目の後半からは上3声とバスが半拍ずれて方や上行、バスは反行して下降していくが、実質的に青の部分はBb major (あるいはg minor)で水色の部分は d minorである。調性のはっきりした部分と調の特定できない部分を両方使いわけるのもバルトークの特徴といっていいと思う。

 

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Poulenc Piano Sonata for 4 hands Movt. 1

Poulenc の4手のピアノ・ソナタ再び。第一楽章冒頭部分。

 

これ、ぜったいバカにしてるよね(笑)「おーばけなんだ、おーばけなんだ、おーばけなんだけれど…」

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Jun Yamamoto "3 Arabesques for String Quartet" (1)

5月に初演する拙作、「弦楽四重奏のためのアラベスク」。こちらが、プログラム・ノートになっております。まず第一楽章ですが、
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第一楽章 Correntemente
波打ちながら連続する16分音符6つを単位とする流れを中心として、これに附点8分音符および8分音符を単位とするリズムが交錯する。コーダは速度を落とし、Tranquillo となって第二楽章への導入となる。
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なんのことやらわからないのがプログラム・ノートというものではないでしょうか(違

「波打ちながら連続する16分音符6つを単位とする流れ」といってもわかりにくいですよね。楽譜で見ていただいたほうが早いと思いますが、譜例の21小節目からのAと示したのがそれです。青い線で示した部分ですが、音は順にa h cis c h b となっていまして、これがしつこく繰り返されるモチーフであります。a h cis と全音全音で上がっていって下がるときにc h b 半音・半音・全音と降りてくるという音形がテーマです。

ノートで「附点8分音符を単位とするリズム」というのがBでありまして要するに16分音符を3+3としたもの、「8分音符を単位とするリズム」というのがCで、2+2+2としたものです。散々やりつくされたリズムですが、それで新味が出せるか、というところが見所ですねぇ。

これらが交錯して音楽を形作っていくわけですが、なるべくよい響きを求めてということで、どの瞬間にも思ったような和音になるようにするのに大変苦労しております。(そうは聞こえないかもしれませんが)この楽章だけでおそらく一年くらいはかかっていますが、演奏すると3分弱です。


初演は5月25日(木)19:00開演、すみだトリフォニーホール小ホールです。

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20世紀音楽の始まり

ドイツロマン派の終わりはどこなのか。ワーグナーパルジファルが1882年、ブラームスの最後の交響曲が1885年である。ワーグナーは1883年に死に、ブラームスは頑張ったが、1897年に死んでいる。シェーンベルクが「浄夜」を書くのが1899年、まさに20世紀の前夜である。


ロシアではチャイコフスキーが悲愴交響曲を書くのが1893年。その年に死ぬ。


しかし、ロシアではムソルグスキーが1874年に「展覧会の絵」を書き(この年は「ニーベルングの指環」が完成した年)、フランスではドビュッシーが愛らしい初期の作品であるピアノトリオを1882年に書き、「月の光」「亜麻色の髪の乙女」あたりは1882年に出来ている。ラヴェルも1885年、「古風なメヌエット」を書いている。


ドビュッシーは1889年に「小組曲」を完成させ、革命は1894年に「牧神の午後への前奏曲」でとりあえず完成している。


ドイツではシェーンベルクの室内交響曲が1906年、ベルクのピアノソナタ作品1が1908年、十二音技法の最初の作品であるシェーンベルクのピアノ組曲はずっとおくれて1923年である。


ロシアからパリに出てきたストラヴィンスキーは1910年に「火の鳥」、1911年に「ペトルーシュカ」と快進撃を続け、ついに1913年に「春の祭典」を発表して、すべてをぶっ壊してしまった。このストラヴィンスキーの「蛮行」はドビュッシーの破壊工作が前提になっているといっていい。


つまり、ドイツ音楽が自重でつぶれて、十二音技法ができるはるか以前にフランス=ロシア連合が新しい音楽の扉を開いてしまったと言えるだろう。

追記)

マーラーとRシュトラウスを加えてみた。この二人は遅れてきた感が強い。もちろん作品の価値には関係ないことだが。

 

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Satie Gnossiennes No.5

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要するに一聴、さまようのである。しかし、よく見てみると必ずしも形式がないわけではない。コード進行は、

 

[1]  G   C  Am  Em  G  D  Bm  Em D Bm

[2] E7(13) * F#m/A  E7 F#m/A  E7 * G D G Bm Em A7 *Bm/D  

[2'] E7 * F#m/A E7 *F#m/A E7  G  D  

 

[1']  G  C  Am Em  G  D  Bm  Em

[3] C  *F  G7  *Am/C  D7(13)  G  D7  G  D7 *F  C  

 

[1]  G  C Am Em G D Bm Em D Bm

[2] E7(13)  *F#m/A  E7  *F#m/A E7 *G D G  Bm Em A7 *Bm/D

[2'] E7(13)  *F#m/A  E7  *F#m/A  E7  *G D

 

[1'']  G  C  Am Em  G D Bm  Em

 

Gから始まる[1]の部分が4回繰り返されており、緩やかなロンドのような感じである。そもそもこの[1]のテーマが一つも属和音主和音というような古典的な進行を含まず、メロディーも順次的にかつ装飾的で彷徨う性格をもっている。

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特徴的なのは、赤字で示した進行だが、属七に、解決しない6度音(13thということもできる)を付加した和音が、バスは「正しく」完全4度上行するのだが、実はバスは次の和音の3度音で第一転回形になっているというパターンである。e.g. E7(13)  F#m/A

これが彷徨い感を醸成する。

青字で示したのは、属七が短三度上がって転調するパターンである。e.g. E7 G

*をつけたのが、古典的な和声ではない進行で耳が彷徨うところである。

 

 

 

 

Jazz A Capella Group "Accent"-Vocal Group History and Styles

アカペラグループのスタイルの解説つきのショーケース。大変参考になります。

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一つずつ、勉強させてもらおう。

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これは割合ストレートですね。C7の次にF#7が来るのは所謂裏コード(増4度上)ですし、あとはほぼ機能和声にしたがってます。 最後の小節のA7 から Eb7b5に行くのもクラシックではおなじみの進行だし。時々7度音が下降しなかったりはしますが…

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これは一筋縄ではいかないアレンジ。特にセカンドパートの半音の動きは凝りまくっていて、これを歌うのは大変だろうな。それと、転回形を自在に使って、各ラインがスムーズに流れるようにしているのがポイントかと。

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こちらは大変シンプル。シンコペーションが多少あるだけで、コード進行は素直である。

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これも和声付けそのものはシンプル。単純な3和音に2度、4度をサスペンドしてみたり、2度を加えたりしている。アルペジオ風の入り方が特徴的。

 

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Take6は最後の3小節はひねってある。内声4つが、基本的に真ん中の2音を半音でぶつける形で降りてくるというアイデアを(おそらく)コアにして他の音を配置していると思う。内声に9th 13th があっても平気でトップにroot を持ってくるあたりはすごくアンチクラシック。

 

 

Prokofiev Violin Concerto No.1 Movt.3

Digitalian's Alchemyで取り上げられていたプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第一番。終楽章の第一主題を取り上げてみたい。音はこちら

 

主題の4小節目にGm の和音からハープとともにBbm7に入るのがなんとも魅力的で、大変プロコプロコした(?)ところだと思うのだ。そのあとの和音進行もプロコフィエフ的である。Bbm7  C/E Ebm7 Fm Abm7 Gdim 。最後のG dim のところでオーボエが主題冒頭を奏でて入ってくる。

Bbm7  Ebm7  Abm7 というならびは同じminor 7th で5度圏を進むだけなのだが、その間に C やFm が入るところが面白い。新しく定義しなおされた反復進行である。

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