Jun Yamamoto 音楽を語る

クラシックのおいしいところをつまみぐい http://jun.la.coocan.jp

Jazz A Capella Group "Accent"-Vocal Group History and Styles

アカペラグループのスタイルの解説つきのショーケース。大変参考になります。

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一つずつ、勉強させてもらおう。

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これは割合ストレートですね。C7の次にF#7が来るのは所謂裏コード(増4度上)ですし、あとはほぼ機能和声にしたがってます。 最後の小節のA7 から Eb7b5に行くのもクラシックではおなじみの進行だし。時々7度音が下降しなかったりはしますが…

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これは一筋縄ではいかないアレンジ。特にセカンドパートの半音の動きは凝りまくっていて、これを歌うのは大変だろうな。それと、転回形を自在に使って、各ラインがスムーズに流れるようにしているのがポイントかと。

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こちらは大変シンプル。シンコペーションが多少あるだけで、コード進行は素直である。

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これも和声付けそのものはシンプル。単純な3和音に2度、4度をサスペンドしてみたり、2度を加えたりしている。アルペジオ風の入り方が特徴的。

 

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Take6は最後の3小節はひねってある。内声4つが、基本的に真ん中の2音を半音でぶつける形で降りてくるというアイデアを(おそらく)コアにして他の音を配置していると思う。内声に9th 13th があっても平気でトップにroot を持ってくるあたりはすごくアンチクラシック。

 

 

Prokofiev Violin Concerto No.1 Movt.3

Digitalian's Alchemyで取り上げられていたプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第一番。終楽章の第一主題を取り上げてみたい。音はこちら

 

主題の4小節目にGm の和音からハープとともにBbm7に入るのがなんとも魅力的で、大変プロコプロコした(?)ところだと思うのだ。そのあとの和音進行もプロコフィエフ的である。Bbm7  C/E Ebm7 Fm Abm7 Gdim 。最後のG dim のところでオーボエが主題冒頭を奏でて入ってくる。

Bbm7  Ebm7  Abm7 というならびは同じminor 7th で5度圏を進むだけなのだが、その間に C やFm が入るところが面白い。新しく定義しなおされた反復進行である。

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Dvorak String Quartet No. 13 Op. 106 Movt.3

ハイメラン/アウリッヒの「クヮルテットのたのしみ」を読んでいる。自分では弾けないのでわからないが、確かにこれは弾きにくそうだ。ドヴォルザーク弦楽四重奏曲第13番作品106の第3楽章。Un poco meno mossoのところの第二バイオリンのダブルストップ。この低い方の音を第一バイオリンに移すとうまく行くのだという。第一バイオリンにもっていくとポジション移動なしで弾けるということかな。

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しかし、ドヴォルザークも厄介なことを書いたものだ。これ、ヴィオラの持続音は要るのかな。チェロに低いd fis を弾かせて、ヴィオラが第二バイオリンの低い方の音を弾けばいいのではないのか。ダメか?どうしてもヴィオラの低いd が欲しいのか。

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Haydn String Quartet No. 64-5 "Lark" Movt. 1 (2)

ハイドン弦楽四重奏曲、通称「ひばり」の第一楽章の35小節目。音はこちら

これはハイドンの発明じゃないかと思うのだが、長二度でぶつけた2音(赤の枠で囲んである)から始まるパッセージだが、基本的に第一バイオリンは順次上行して、つぎつぎと転調していく。便宜上、赤枠部分は e の音を掛留音と解釈して、Bmというコードネームをつけたが、36小節目の2拍目も減和音で調性はあまりはっきりしない。2拍目の裏でFの和音になるが、これをA minor(属調の同主短調) のVI度の和音と解釈してみた。その後、B Major(VI度調) A Major (属調)を経て、スタート地点のE Major (II度調)に戻ってくる。全体はシンコペーションになっており、発表当時は斬新だったのではないかと思うのだが。 

 

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Haydn String Quartet No.64-5 "Lark" Movt. 4 Finale

ハイドンの有名な弦楽四重奏曲、通称「ひばり」の第4楽章フィナーレですが、「これぞ掛留音」という見本のようなところがあるので、引用します。57小節目からですが、第一バイオリンと第二バイオリンが交互に掛留音とその解決を見せてくれます。

56小節目の後半はAの和音すなわち、ラ、ド#、ミの和音です。次の57小節目は和音としてはDmの和音で、レ、ファ、ラの和音です。この小節の冒頭では、第二バイオリンが前の小節のミの音をタイで延ばしていますが、これが掛留音(retention=r)です。本来レ、ファ、ラの和音なのですが、ミの音が入っています。考え方としてはこのミの音は、本来レの音なのだが、前の小節から「掛留」することでこの小節の頭に「残っている」ととらえます。ここで、ミの音と和音のもともとの音である第一バイオリンのファの音が半音でぶつかりあって緊張感を持ちますが、それはすぐ次の8分音符で、延ばされていた第二バイオリンのミの音が一音下がって本来のレの音に進むことで「解決」します。この(故・桂枝雀師匠ではありませんが)「緊張と緩和」が美しいわけです。

このあと、同じように、57小節目の後半はC7すなわちド、ミ、ソ、シbの和音に、前半から第一バイオリンがファの音を引っ張っていて、これも掛留音になっています。このファの音は、第二バイオリンが一音高いソの音(これは和音本来の音)を鳴らしていますので長二度でぶつかって緊張していますが、すぐにファからミに降りることで、「解決」します。ここも「緊張と緩和」です。ここの部分はこの緊張と緩和が絶え間なく4小節にわたって繰り返されるので大変スリリングな展開となっています。

もう一つだけ説明しておきますと、次の58小節目の最初の和音はFですからファ、ラ、ドの和音ですが、第二バイオリンが前の小節からソの音を引っ張って「掛留して」います。これは第一バイオリンのラの音との間で緊張を生みますが、すぐ下がってファに「解決し」緩和します。以下同文で60小節冒頭まで続きます。

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Mozart Piano Concerto No.23 K 488 Movt. 2

モーツァルトの23番のピアノコンチェルト。イ長調。もともとモーツァルトのピアノ協奏曲は名曲ぞろいなのだが、わけても終わりのほうの数曲はすごいですよね。ピアノも美しいが、オーケストラも精妙で、とりわけ木管楽器の扱いは素晴らしい。

この曲の第二楽章は主調イ長調の並行調である嬰へ短調で書かれた、8分の6拍子のまことに愛らしい小品である。最初の部分だけ、スケルトンを示す。一番上の段にポップス風のコードネーム、中段にコードの機能を示すためにスケール上の何番目の音の上の和音かを示し、さらに倚音には a 掛留音には r 経過音には p 刺繍音には bと注記した。音はこちら

ピアノ独奏でシチリアーノ風の美しい旋律が奏でられる。三声体だがまったく必要十分な和声である。5小節目の冒頭右手のDはかなり大胆だ。7小節目の前半はIV7の和音で、一瞬 E durを示す。次の8小節目の右手のais は経過音とみるのが正しいかもしれない。そうであればここの和音はF#ではなくF#mである。9小節目はGの和音で、これは主調のナポリの6度の和音である。12小節頭で主和音に終止したあと、絃楽器のアルペジオに乗って、クラリネットから新しい旋律が出て、4回の「入り」がある。それぞれに番号を付して緑の枠で囲んだ。それぞれの「入り」は、a h cis d と一音ずつ上がっていき、2回目以降必ず2小節め頭で掛留を持つ。

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14小節目の冒頭はバスが a に解決しており、上にC#7が掛留和音としてのっていると解釈すべきだろう。17小節目の前半はG#7で、属調のCis dur を感じさせる。18小節目はF#7b9の和音であり、一瞬 h mollを感じさせるが、すぐにバスが半音上がって再びGとなってこれはナポリの6度である。

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この旋律は、松本隆さんによって詞がつけられ、薬師丸ひろ子さんのアルバム「花図鑑」に「花のささやき」として収められている。旋律はほぼ忠実になぞられ、4回繰り返される木管楽器の入りについては、1番目と3番目を主旋律としている。編曲は武部聡志さんが担当し、大向こうをうならせるようなしゃれたものになっているので一度お聞きいただきたい。

 

Schubert Piano Sonata No. 20 D 959 post.

某所で話題になったシューベルトの最晩年のピアノソナタである。弦楽四重奏第15番にも執拗な固定音程のペダルとでもいったものが見られるが、この曲では、調性すら危うくなりほとんどコントロールを離れてしまっているように聞こえる。

第一楽章の285小節目から、ほとんど調性が追い切れない。特徴的な四分音符二つの動機も d h e b g c cis fis dis gis e d f gis f d e gis となんとなく a mollを目指しているようではあるが、混沌としている。

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第二楽章の中間部に至ってはさらに徹底している。

右手の速いアルペジオが始まり、一旦c mollに落ち着いたかに見えるが(cis mollの曲であるから既に非常に調としては遠いのだが)

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Db=C# majorの和音を経て、e mollにいたり、さらにFmの和音からあっさり半音上がってF#mに至る。

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107小節目は左手はC#mの四六の和音でcis mollであろうが、111小節目に至って、右手はcis e g (C#dim?)さらにバスがaisとhのトリルである。右手のスケールはe moll ということはaisが倚音で、バスはhなのか? 

114小節目で左手はクロマティックになってしまい、右手はeのオクターブ、116小節目でバスがcisに落ち着き右手はなおもクロマティックではあるが、小節頭のe があるのでC#mを感じさせる。

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120小節目から右手がC#mになって左手も明瞭にcis mollとなって原調に戻ってきたことが明確になる。

そのあとだが、126小節目の右手のDは奇妙で、あえて言えば、cis mollのナポリ6だろうか。128小節目 130小節目とDの三和音を強調して、D durあるいはA dur を思わせるが、133小節目はC#mの四六となり、

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cis mollのドミナントを強調していくのだが、また141小節目でC# majorの四六になる。次の143小節目の和音は実に奇妙に響く。

ここはおそらくcis mollのドミナントであるG#7の根音抜きの形、が左手で右手をクロスして高音で示され、右手のais は gis の倚音なのであろうが、耳が迷う。(下からais dis fis his であり、Cm7b5の第三転回形)145小節目にやっとais はgis に解決してCis durとなる。